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第11話
部屋に戻ると、アレクサンドルはまだ眠っていた。
「…………」
せめて、今日だけは。
そう思い、俺はその傍に座り、目を閉じた。
離れたくない。
このままずっと傍にいたい。
生徒だった時からずっと、アレクサンドルを想い続けているというのに。
だが、俺にはイヴジェーニのような事は出来ない。
いつしか眠っていた俺が目を覚ますと、身体には毛布が掛けられていた。
そこにアレクサンドルの姿はなく、
『起きたらベッドでちゃんと寝なよ。遠征から帰って来たらまた飲もう』
という置き手紙がテーブルの上にあった。
「…………」
俺はその手紙を軍服の裏ポケットにしまい込むと、翌朝そのまま遠征に出た。
北方地域の制圧が目的だった遠征。
それを最小限の被害で無事果たし、この地の領民が我々を受け入れてくれるまで、俺は撤退する事無くこの地に居続けた。
国を離れてから、気がつけば半年が過ぎていた。
毎日が目まぐるしく、お陰で余計な事を考える余裕がなく、アレクサンドルへの想いを絶とうとしていた俺には丁度良かった。
けれど、国王陛下からの帰還を求める手紙が届いた為、俺は領民から選ばれた代表に統治を任せるのを見届けると、帰国を余儀なくされた。
手紙は、アレクサンドルからも届いていた。
遠征先で出したらしいものと、帰還先で書いたらしいもので、手紙の最後には必ず、
『茶色の髪に緑色の瞳をした人を見ると、ミーシャの事を思い出すよ。無事にまた会える日を楽しみにしてるから』
と添えてあった。
俺はそれを見る度、自分の愚かさを痛感した。
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