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第24話
帰国した俺を待っていたのは、いつもよりも更に広くなった家だった。
「アレクサンドル……」
いつもふたりで酒を飲み交わして過ごした部屋。
そこに絵師に頼んで描いてもらった、俺たちふたりの肖像画を飾っていた。
ここで一緒に暮らす記念にとアレクサンドルが言い出して作った肖像画。
その美しい姿は彼そのものだが、俺に向かって声を発する事も笑いかける事もない。
『スゲーソックリ!!これでお互い遠征で離れ離れになっても寂しくないね』
ひとりで酒を飲みながら、そう話していた笑顔のアレクサンドルを思い出す。
「……お前に嘘をつかれるなんてな……」
涙が溢れてきた。
離れ離れになって寂しくない、なんて事などなかったが、必ずここに帰って来ると信じていたから堪えていただけの事だった。
そして、ここでずっと一緒に暮らす約束をしたから大丈夫だと安心しきっていた。
『オレ、もう生きていけない……』
アレクサンドルはどうしてあんな事を言ったんだろう。
あれが錯乱状態ではなく、正気で言った言葉だったとしたら、俺は彼を止めなければならない。
かつて俺が救われたように、今度は俺が彼を救うんだ。
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