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17.休日のご予定は?

  「ルイ? なんか顔赤いけど大丈夫?」  教室に帰ったら夢野が話しかけてきた。  俺なんかの心配をしてくれるなんてやっぱり夢野は優しい。  でも今だけはスルーしてほしかった! 「だ、大丈夫……暑いからかな?」  まさかヤンキーな先輩とキスしてて顔が赤くなりましたなんて言えないから誤魔化しながら制服の上着を脱ごうとしたら全員から止められた。  ホントに全員、夢野だけじゃなくていつも夢野を連れて行ってしまう友達と言うより取り巻きのような人達にまで。  そんなに見苦しかったのだろうか。  あまり嬉しくないがクールダウンできた俺は普通に授業を受ける事が出来た。  ※ ※ ※  さて今日も何事もなく、いやあったけどあれは友人同士のスキンシップだしこれから慣れていくだろう出来事だから何事もなく一日を終えたと言っていい。  ……慣れるだろうか。  なんて考えたところで仕方ないので部屋で試験勉強をしていたらラインの着信音が鳴る。  何か用かな、とスマホを手に取って「んんっ!?」と驚愕した。  だって先輩からだと思ってたら画面に『猫野チェシー』って出たから。  え、うそ、チエ? と慌ててラインを開けば『やっほー』と可愛いスタンプが送られてきてて、直ぐに次のラインが送られてきた。  どうやら新しいスマホにしてなんとかラインも復元出来たらしい。  良かったね、って事とライン出来て嬉しいって事を送ったらちょっと時間を置いて『俺もめちゃくちゃ嬉しい!!』と返ってきた。  やっぱり猫野も優しいな。  その後は今何してるとか家族の事とかよく行く店は、なんて会話をして、最後に『次の休み空いてる?』って来た。 『試験勉強ぐらいしか予定は無いよ』と送ったら『じゃあ昼にハンバーガー食べに行こーぜ!』と来た。  ハンバーガー、たぶんあのチェーン店の事だろう。  休日にクラスメイトとハンバーガーを食べに行く……え、すっごく友達っぽい! 『行く!』それ以外の返事はもちろん無い。  俺なんかが猫野の休日の時間をもらっていいのかと思うけど、誘ってくれたのは猫野だし少しぐらい良いよね。  俺が返事をしたら猫野からは『やったー!』って凄くテンション高めなスタンプが送られてきて、嬉しいのは俺だけじゃ無いんだと胸が温かくなった。  嬉しいなーって思ってたらまたラインが来て今度は何かなと画面を見て 「んええっ!?」  またまた驚愕してしまった。  だって今度は画面に『夢野アリス』と出ていたから。  え、アリス? え、何で? と混乱しながらも画面を開いたら 『アリスでーす! 猫野からライン聞いちゃった! 勝手に聞いてごめんね?』  と送られてきた。  謝られたけど全然気にしてない事と俺も夢野のライン知りたかった事を伝えたら喜んでくれた。  どんだけ優しいんだこの人達は。  そしてやっぱり休日の話になって、 『チエとハンバーガー食べに行くよ』と伝えたら『あの野郎』と来た。あれ、どうした急に。  目をぱちぱちさせてたらその文章は削除されて 『僕も一緒に良いかな? 猫野には僕から言っておくから!』  と来た。どうやら先程のは誤送信だったみたいだ。  もちろん返事はOKに決まってる。猫野だって日頃から仲のいい夢野が居たほうが楽しいだろう。  楽しくて、ちょっとだけ緊張した友達とのラインが終わったらどっと疲れた。  ベッドに寝っ転がりスマホを見ながら顔が緩んでしまう。  もう友達だよね? 休日にわざわざ遊びに行くぐらいだから友達と呼んでも良いよね。  諦めかけていた夢が少しずつ形になってきていて、胸が踊るってきっとこう言う事だ。  ずいぶん目標の低い夢だと思われるかもしれないが俺にとっては高望みに近い夢だったんだから。  ふふ……と自然と笑みが漏れる。  ハンバーガーを食べた後はどうするのかな。ゲームセンターとかカラオケに行くのかな。それとも服を買いに行ったりするのかも。でも試験も近いし食べたら直ぐに解散かもしれない。  友人同士で休日を過ごすと言う未知の体験にワクワクは止まらない。  だけどふと頭に不安がよぎった。 「………服、何着ていこ……」  俺にとっては非常に大きな不安が広がった。  ※おまけ 〜自室での猫野チェシー〜 「ふおぉおぉぉお……っ!!」  ベッド上で悶える俺をルームメイトが見て見ぬふりをする。  だってこんなの誰でも悶えるだろ。 『俺もチエとライン出来て嬉しいよ』  可愛いあの子との初ラインでこんな言葉送られたら正気でいられるはずが無い。  なんども見直しては悶えてスクリーンショットを撮ってニヤニヤして、やっと返信をした頃にはルームメイトは居なかった。  おわり

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