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75.洗面器なんたら

  「おっ、アーリスちゃん!」 「猫野か、丁度良かった」  歩いている最中に、ランニング中だったらしい猫野と会った。丁度良いから猫野も巻き込もう。さすがに一人で乗り込むのは危険だろうから。  ルイの信者どもが本拠地としている場所はだいたい掴んでいる。  ただ、あまり踏み込めばまた取り囲まれてもたまらないので深くまでは行けていない。  しかし体だけはでかい猫野が居ればそう簡単には襲う気にはならないだろう。 「て訳で行こうか」 「どーゆー訳?」 「まぁまぁ、猫野にも関係ある事だしね?」 「アリスちゃん説明プリーズ」  困惑しながらも僕に付いて来るのはよっぽどのお人好しだからかルイの件である事だと察しているからか。たぶん後者だろう。  猫野は基本アホだがルイの事になると少しは頭が回る。 「んでどこ行くんだ?」 「西棟の方だよ」 「西棟って芸術科んとこじゃん」  芸術コースの生徒だけは僕達とは校舎が違う。芸術系の部活もほとんどがその校舎に集まっていて、そのうちの一つに用があるのだ。 「殲滅のカタルシスドラグーンってクラブ知ってる?」 「……中二病クラブ?」 「ある意味当たりかな」  名前からしてあまり相手にしたくない面倒くさそうなクラブだが、僕はそこに行かなくてはいけない。  正義を掲げて自分に酔った中二病集団、それがルイの信者どもだからだ。  ルイを神と崇めてその他を悪とし勝手に排除している自分達を正義と疑わないはた迷惑な集団。  何が迷惑って、ルイが望んでもいないのに奴らは本気でルイの為だと信じて疑わない。当の本人が知ったら即座に「迷惑なっ!」と言いそうだ。 「その洗面器なんたらが俺たちに何かしてるやつらなのか?」 「殲滅の……まぁ良いか洗面器で。その洗面器なんたらが僕や猫野に嫌がらせしたりルイと話すのを邪魔してる集団だよ」 「よし潰そうぜ!」 「簡単に言うけど猫野は手を出すとマズイからね? 写真撮られて暴力振るわれたって言われて今度こそ退学だよ? 僕はそれでもかまわないけどさ」 「えぇ……じゃあ何で俺連れてきたんだよ……」 「はったりのため。ルイの為にもそれぐらいは協力してよね」 「……はい」  僕の話を聞いてやや逃げ腰になった図体だけでかいヘタレ猫野の逃げ道を潰す。  先程からやや距離を置いてチラチラ視線を送ってくる奴らは僕や猫野の見張りだろう。  すっかりターゲット扱いされてるなぁ。  へっぴり腰になりかけた猫野にそれじゃはったりにならないだろと喝を入れながら西棟へ近づけば、不躾な視線が増えた気がした。  見慣れない生徒が来た事による視線もあるかもしれないが、それだけでは無いだろう。  右のポケットにはお守り、左のポケットにはボイスレコーダーを入れて、ついでに猫野に先を歩かせて西棟へと入って行った。  

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