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闇の深淵1
夜の街を身体を引きずって歩いたのを覚えてする。
どこへ向かっていたかも分からない。
蛾が炎に惹かれるように、何かを求めて歩き続けた。
求める?
この世界に何を?
とうとう倒れた。
沢山の人が通り過ぎたが、誰も気にとめやしないことは分かっていた。
父親を殺して来た。
母親を殺して来た。
妹を殺して来た。
家政婦を殺して来た。
「兄ちゃん、ありがとな、兄ちゃんだけや、ウチを助けてくれたん・・・」
最後に殺したのは妹。
殺してくれと懇願されて、最後にとうとう受け入れた時泣いて言った。
お前に生きていてええことなんかあったんか・・・。
狂った父親にヤられ続けた妹。
殺した家政婦のことも考えた。
あんたは、なんでそんなになったんや・・・、家政婦と言う名の父親の愛人、いや、奴隷。
僕達家族の生活費は、家政婦が稼いでいた。
朝は新聞配達、昼や夜は怪しげな仕事で。
もう若くはない家政婦は身体に無数の傷痕があり、それは何かしら特殊な性癖の人達の相手をしているからだと分かったのは僕が大きくなってからだ。
父親はどういう手段を使ったのか 分からないが、家政婦を支配し、金を稼がせ、殴り、支配し、たまに犯していた。
家政婦はまともに喋れなくなっていた。
殺した時でさえ、恐怖さえその目に浮かべず、大人しく、ボクの包丁を受け入れた。
母親は、何もみようとしなかった。
綺麗で高い靴が大好きで、それを並べて見るのが好きだった。
それ以外は妹のことも、家政婦のことも見なかった。
ボクのことも。
母親も恐ろしい男につきまとわれた家族がその男から逃れるために、その男に差し出した娘だと知ったたのはいつだったか
父親は、きままに誰かを殴り、女達は犯し、閉ざされた家で君臨していた。
地獄のような家。
ボクは度々殴られた。
父親のコンプレックスを埋めるために、優秀でなければならかった。
所詮、女を殴ってその稼ぎて食べるしかない父親 はボク達以外には威張れないことを自分で知っていたからだ。
ボクは人を支配する人間になることを求められた。
父親は人には会社を経営していると言っていた。
会社が聞いて呆れる。
毎日パチンコ屋に行っていただけだ。
月100万以上の生活費を稼ぐのは家政婦だ。
おそらく、家政婦は非合法なことにも、手を出していたのだと思う。
僕の家の異様さに沢山の人が気づいていたと思う。
父親は妹が学校に禁止されている携帯を持ち込んで取り上げられた時、学校に乗り込んで、校長をどやしつけ、妹が学校で携帯を持つことを認めさせたりしていたから。
父親は有名なモンスターペアレントだった。
僕の顔に痣があることも、妹の精神が危ういことも、母がおかしいことも、何より家政婦がめったに家にいず、ガリガリにやせ細り、まともに話すことさえも出来ないことも、皆知っていたはずだ。
ただ、父親に関わるのが嫌だ。
その理由だけで、僕達はなかったことにされた。
だから、僕はずっとずっと待っていた。
大人になって、あの男を殺すのを。
求めた助けはすべて無視され、泣く妹の声を聞こえないように耳を塞ぐ夜を何度も耐えて。
毎日走り、腕立てをし、庭の木を殴りながら、身体が大きくなるのを待った。
そして、とうとう殺した。
泣いて懇願された。
殴って殴って、動かなくなった時、ソイツは必死て許しを乞うた。
僕達家族が恐れていた男は、何もない男だった。
空っぽだった。
弱さしかない男だった。
僕は知った。
僕達が弱かったことこそが、コイツに支配されていた理由なのだと。
そして、強くなった今ではもう自分達を救うには遅いのだと。
でも、それはこの男を殺さない理由にはならなかった。
バットで叩き殺した。
母親は逃げた。
今さら逃げてどうするというのだろう。
もっとはやくにげるべきだったのだ
不思議に思った。
追いかけて、包丁で刺し殺した。
この人も弱かった。
それだけ。
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