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捕食者と従属者1

 最近男は優しい。  前はとにかくヤるばかりで、昼夜問わずひたすらむさぼられるだけだったけれど。  それはそれで気持ちいいんだけど。  でも、まあ、それ以外のこともしたいわけで。  「何が欲しいんだゲームか?、漫画か?」   面倒くさそうに言われる。  それを言われると、自分が本当にガキ扱いされているのが嫌になるけれど、ゲームや漫画は欲しいわけで。  沢山買ってもらってしまった。  ゲーム好きなんだよ・・・。  男も一緒にしてくれることもあって、結構楽しい。  そうやってふざけている時のあの人は、少し意地悪で優しい、普通の年上の恋人みたいだ。  服やなんかは男の好みにお任せで買ってもらってる。    ダサいのは連れて歩きたくない、とのことだ。   結果、金のある大学生の遊び人みたいな格好にされてしまっている。  髪も、美容院で切られているし。  髪切るだけでこんな値段とられることを知った。  びびった。  でも、俺があの人の好みの格好したら、すごく機嫌がよくなるので、まあ、いいかと思っている。  後はセックス以外は訓練ばかりだった。  あの人からの訓練は続いている。  あの人の「仕事」のサポートのために。  銃の扱い、撃ち方、人への忍び寄り方。  「僕は暗殺専門だからな」  とスーツ達に頼んで 、軍事訓練みたいなのも受けさせられている。    空手の道場もその一つだ。  元々、練習漬けの毎日を送ってきていたから苦にならない。  これでも中学までは世界をいずれ、と期待される陸上選手だったのだ。  「流石だな」  スーツも何度か誉めてくれた。  スーツは毎回いるわけではないけれど、たまにいる時には俺に色々教えてくれる。  あの人はスーツを嫌っている。  俺とスーツの間を警戒している。  俺が抱かれることをしぶしぶながら容認してるのはあの人だけなんだが。  俺が誰かを抱きたいと思うことはあるかもしれない、ヤりたい盛りだし、俺は。  でも、「抱かれたい」等と思うわけがない。  それに・・・スーツはいい人だし。  身体もいいし、優しいし。  でも、顔が・・・。  悪くはないが、おぼえられないくらい平凡すぎて。  ・・・抱きたいとは思わないだろ、うん。  大体、俺に少しは優しいところもある以外、何一つ言いところがないあの人から離れることが出来ない程の面食いなんだぞ、俺は。  あんた、顔と身体とセックス以外良いところないだろうが。  性格ワガママで最悪だし、嫉妬深いし、すぐ殺すし、卑劣だし、卑怯だし、残酷だし。   ゴム使わないし、中に出すし、やりたくなったらどこでもするし、嫌だって言っても止めないし。  あ、腹立ってきた。  それでも離れられない。  どうしても。  そうだな、でも確かにスーツと俺を繋ぐものはある。  もし、俺が。  俺があの人といることにどうしても耐えられなくなったら、殺してくれるとスーツは約束してくれている。  俺を殺してくれると。  俺をあの人のオナホにした罪悪感からの償いに。  俺は離れられないだろう。  あの人は自分が俺に執着していると思っている。  違う。  離れられないのは俺の方だ。  ありとあらゆる言い訳を積み立てて、離れないのは俺だ。  でも 、いつか耐えられなくなるかもしれない。  あの人は、あまりにも人間ではないから。   それでも俺は自分では、逃げられない、離れられない。  その時に逃げる方法があると思うだけで、踏ん張れることもあるのだ。  スーツとの約束は、あの人には言えない、でも、あの人といるために必要な約束だった。

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