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記憶1

 ソイツと抱き合うように寝ていた。  ただ 、その安いホテルの部屋のベッドが一つだったからだ。  抱きかかえられるようにつれて来られ、ベッドに寝かされた。  ボクはもう、自分で何かをしようとは思えなかった。 ただ涙を流すだけ。   「ひどい顔やな・・・」  向かいあうように寝転びながらソイツはボクに言った。  その声はただの音に聞こえた。    ソイツはボクの頬に触れた。   「冷たい。冷え切っとる」  ソイツは言った。  そっと、布団の中で抱き寄せられた。  「くっついとけ。暖かいやろ」  優しい声だった。  ソイツは僕より小さかったから、ボクは暖かい塊を胸の中に閉じ込めているようだった。  暖かかった。  ぎゅっと抱きしめた。  着ている服越しに 人の肌の暖かさを感じた。  暖かい。  震えながら、ソイツの頭を自分の胸に抱えた。  髪の中に指をいれ、ぐしゃぐしゃにする。  人の身体を感じたかった。  こんな風に人と触れ合ったことはなかったし、これが性的な接触だという自覚はなかった。  たた、もっと、深く近くに人のぬくもりが欲しかった。  悶えるようにただ、身体をだきしめ、ソイツの身体に自分の身体を擦り付けていた。  冷え切ったはずのボクの身体は、ソイツに触れた場所だけが熱い。  何故か股間に熱が集まりはじめていた。  「・・・おさまらんか。殺した後や、欲しくなる」  抱きしめたソイツがため息をついた。  「・・・お前、オレとしてみるか?」  ソイツがボクの首に腕を回して言った。  優しい目だった。  「・・・何をするんや」  ソイツの視線に目眩がした。  そう言う唇に、何故かむしゃぶりつきたいと思った。  ボクは生まれて始めて感じているこれが性欲なのだと知らなかった。  「・・・嫌ややったら、言えよ。止めたる」  ボクの首に両腕を回し、ソイツはボクの頭を自分の方へ引き下ろした。  唇と唇が重ねられた。  それがキスだと言う事 くらいはボクも知っていた。  唇は優しく重ねられ、何度も触れ、離れを繰り返した。  ボクはそれがくるのを待つ。   心地良かった。  唇を唇で挟まれ、啄まれるのも。  ボクもその唇が欲しくて自分から求めた。    だから舌が入ってきた時も、自分から絡めた。  じっとソイツを見つめながらキスした。  こんな近くに人の顔があることも、もっと欲しいと思うのも不思議で。  ソイツがキスの合間に目を開けて 、じっと見つめるボクに赤くなりながら言った。  「・・・キスする時は目を閉じるもんや」   「・・・何故?」  ボクは尋ねた。  「オレをもっと感じるためや」  優しく微笑まれた。  胸に痛みを感じた。  なんでそんなとこが痛むんか、分からへんかった。  僕は目を閉じ、ソイツにキスをした。    舌を絡ませ、その感触だけを追う。  確かにソイツをソイツの中を感じた。  気持ち良かった。  「・・・どうする?」  囁かれた。  「何をや」    ボクは戸惑ったように答える。  「この先、続けるか?お前、男どころか、女も知らんやろ。キスかて、知らんみたいやし。止めてもええんやで」  思いやるように言われた。     「オレは入れられる方やからな、お前、男相手に最後までは出来へんやろ、お互いにしごき合うのにしとこか、それでも、少しはおさまるやろ。人殺した らセックスしたなるもんやからな 、はじめてが男なんもあれやしな」     ソイツは優しい指使いで、ズボンの中の僕のモノをしごき始めた。  気持ち良かった。  指だけでも。  思わず声が出るほどに。    ほんの数回だけしたことがある自分でするのとは全然違った。  嫌悪しか残らなかったあの快楽とは。  でも、でも。  「・・・最後までってどうするんや」  ボクはソイツの顎に手を当て、顔を上げさせ、その目をのぞきこみながら言った。      

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