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記憶3

 ただ夢中になって、キスをした。  その穴に入れているソイツの指を抜いて、僕の指を入れた。   唾液でぬらし、優しく。  ここはボクのや、そう思った。  生まれ初めての執着を感じた。  「どうしたらええ、言うて」  気持ちよくしてやりたかった。  ボクが   ボクで満たしたかった。    ボクだけで。  「・・・自分、可愛いなぁ」  喘ぎながらソイツ は言った。  言われるまま、穴をかき混ぜ、擦りたてた。  そこを見つければ、ソイツは、声を上げて乱れた。  胸が痛くなった。  「気持ちええ?」  ボクは尋ねた。  「・・・ええで。入れてや、お前のを」  せがまれたら、目眩がした。  中にはいりたかった。  獣のような声が自分から出た。  腰をつかんで、脚を押し広げ、そこに突っ込んだ。  「あかん、ゆっくり・・・」  ソイツが呻いた。   でも、ボクは止まらなくて。  獣のような声を上げて押し込んだ。  そして、本能のまま、突き上げた。  「あかん、って・・・」  呻き声が聞こえなかったら、そのまま突き上げ続けただろう。  相手のことなど考えもせず。  でも。   苦痛に歪むソイツの顔を見て、ボクは叫んだ。  苦痛にゆがむソイツを、みても、自分の中の欲望が止まらないことが怖くて。  そのまま、してしまいたいと思う自分を知って。  ボクは気持ち良かった。  良かったのだ。  泣き叫ぶ妹を犯す父親が見えた。  「ボクはアイツや。アイツと同じなんや!泣いて る自分の娘を犯して気持ちようなるヤツと同じなんや!」  ボクは叫んだ。  快楽は醜悪だ。   ボクは醜悪だ。   ボクは・・・。    ボクは悲鳴をあげた。  自分の醜さに耐えられなかった。  ボクにはアイツの血が流れていて、ボクはアイツと同じであることを思い知らされて。  がりっ  指を噛まれた。  その痛みに、正気にかえった。  「このアホ、おちつけ」  ソイツがボクの指を咥えていた。  「オレは大丈夫や。ちゃんと気持ちいい。オレはお前としたくてしとる。むしろ初めてを喰ってもうて悪いて思てるくらいや」  優しく宥められるように言われた。   「お互い同意の上でも、セックス中は獣みたいな気持ちになるもんや。でもな、それはお互い様や。オレもお前が喰いたいんや」  腰を振られた。  その感触にボクは呻いた。  「お前はオレに酷いことなんかしてへん。怖がらんでいい。オレは死なへんし、傷つかへん・・・な?」  優しく言われた。  「大丈夫や、大丈夫やから」  繋がったまま、抱き寄せられ、キスをされれば、狂おしい気持ちはとめようがなくて。  ボクは腰を打ち付け、ソイツを味わう。  ソイツの中は、暖かくて気持ちよくて、生まれて始めてずっとここにいたいと思えるような場所だった。  ボクは声を上げて、ソイツを抱き続けた。  出しても出しても出したりなかった  奥に入れても、もっと奥にはいりたかった。  「お前、ホンマ、はじ、め、てか。ウソ、やろ」 ソイツは何度も、そう言った。  反る背中も、震える身体も全てが愛しかった。  「気持ち、ええ」  そう言われた。  それが涙が出るほど嬉しかった。  この気持ちをあらわす言葉がわからなかった。  ただただボクはソイツを貪り続けた。

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