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潜入1
「潜入?」
俺はそれがどういう意味か分からなかった。
「今回のターゲットはコミュニティーの中にいるから情報収集が難しいんだ・・・」
スーツが説明した。
「何故俺が?」
スーツ達がすればいい。
俺は最近訓練を受けてはいるけど、ど素人だ。
潜入捜査など出来る訳がない。
誘拐の拉致るタイミングだけはプロ級だと、あの人に誉められているし、格闘術は筋がいいとスーツに言われているけど。
どちらかと言うと、闇のスキルばかり上がっている気はする。
自白剤の取り扱い方、注射の打ち方。
どこまで傷つけても人は死なないのか、などの知識を入れられている。
最近覚えることがふえている。
車の運転、ナイフの扱い、ピッキング等。
意外と勉強ばかりだ。
あの人も新しい知識への勉強とかは熱心だ。
悪人も大変・・・、いや、一応正義の味方なんだよな、俺達。
結構ツライ。
ゲームがしたい。
ただ、性欲だけは満たされている。
毎日してる。
てかされてる。
入れさせてもらえてないけど。
後悔した。
死ぬほど後悔した。
あの人が土下座しようとした時、「やらせてくれれば許す」と言えばやらせてくれたんじゃないかと、後で気付いた。
「・・・土下座よりはそっちだな」
と後であの人に聞いたら言っていたので、俺はせっかくのチャンスを棒にふってしまったのだと知った。
「させて」
とお願いした。
それこそ何度も床に頭を打ちつけて土下座してお願いした。
しかし、
「お前もういいって言ったじゃないか」 と取り合ってもらえない毎日なのだ。
俺のバカ。
本当にバカ。
「・・・どうした?大丈夫か?」
スーツが心配そうに言った。
俺は迷走していた考えから引き戻される。
「大丈夫、でもなんで俺なんだ?」
俺はもう一度尋ねる。
「年齢的に最適なんだよ。ほとんどが20才までの若者かホームレスの老人だ。君なら違和感がない」
スーツは言った。
俺はあの人を見た。
この人次第だ。
「お前がいないと好きな時にセックス出来ないから困る・・・2、3日、まぁ、セックスの方はなんとかするから情報集めに行ってこい」
どうなんとかするのかが気になった。
小柄な金髪の少年と、背の高いメガネの青年。
写真がテーブルの上に置かれた。
いつものようにスーツが勝手にあの人と俺の家に鍵もないのに入ってきてるのだ。
3人でダイニングのテーブルで話していた。
「どちらも19才だ。金髪は童顔だからそうは見えないが」
スーツは言った。
「どちらかが捕食者でどちらかが従属者だと思われるが、もしからしたら、第三者が捕食者の可能性もある・・・この二人は離れないからどちらがどちらなのかが分からない」
金髪の青年は人の良い笑顔をしていた。
思わず引き込まれるような。
「・・・この金髪は大した狂犬だぞ。不良グループ率いてヤクザ相手に抗争までいったこともある。撃たれて死にかけただけですんだがな・・・」
俺はおどろく。
そうは見えない。
優しい笑顔だ。
「父親に性的虐待や暴力をうけていて、父親を12才で殺している。その時は正当防衛ですんでいる。その後は施設で育った。母親とは5才に離婚していらい会っていない。天涯孤独・・・そいつは本当にたいしたヤツだぞ、ゲイを公言しているのに不良達のカリスマだったからな」
スーツが言う。
意味が分からない。
そんなことは有り得ないからだ。
「どちらかと言えば不良の世界はホモファビアな世界だからな、不良の世界ってのは。ゲイは迫害されやすい。しかも、入れられる側だとすれば【女】扱いだ、普通は上には立てない」
それは俺にも分かる。
女みたいに声を上げて抱かれる自分を昔の不良仲魔には知られたくない。
そんな男は不良の中では威張れない。
男ぶりたい連中で、奴らの【男】はゲイを含まない。
だから俺は隠してた。
「コイツはビッチで有名だったが、それでも不良達の上に君臨したんだよ。何故だかわかるか?」
俺は首を振る。
俺だって高校生の男だったし、少しは不良だった。
だから、ゲイがバレることを恐れていた。
そして、俺も女みたいに抱かれる男をかっこいいとは思えないんだよな。
自分がそうなのに。
そう思い込まされている。
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