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潜入7

 「ど淫乱・・・可愛い」  あの人が笑う。   何でもいい。  この人が欲しい。  もっと欲しい。   唇を強請り、腕をあの人の首に回す。  「あんたが好きだ」  あの人の顔が歪む。  俺に応える言葉が言えないから。  分かってる。  こたえなくていい。    俺はあの人が困らないように、自分から唇を塞いだ。  そんな言葉も言えない程臆病なあの人が、愛しくて。  あの人は俺と舌を絡ませながら、強く俺を抱きしめた。  深く深く繋がって、キスを繰り返す。  かき混ぜられ、奥を突かれ、何度も出され、イカされる。  気持ち良さと愛しさに 、溶けてしまうかと思った。  「 触らせてまでやったんだ・・・僕のいないとこで誰かに触ったり、触らせたりするなよ」  もう動けなくなった俺にあの人は言った。  顔は見せないで言う。  嫉妬深いくせに、それを指摘されるのは嫌がるし。  なるほど、触らせてくれたのも、潜入している間に俺が他に興味持ったりさせないためなのか、と思ったら、またこの人が可愛いくなってしまった。  どこまで素直じゃないんだか。  「あんたも俺がいないからって、悪い趣味だして誰か殺して犯したりするなよ」  俺よりあんたのが心配だ。  「・・・死体は浮気にならないと思わないか?」  あの人が言った。    真面目な顔で。  「ダメに決まってんだろ!」  俺は怒った。  コイツ、やっぱりそのつもりだった。  ヤッてしまうと不死身の人間を増やしてしまうため、男は俺以外とはセックスしたら殺すか、殺してからセックスするしかない。  面倒がないと言う理由で死体とセックスするのを好む性癖もこの男にはあって。  ・・・俺、なんでこの人が好きなのか分からなくなるな。    筋金入りの変態だし。この人。  でも、浮気って。  俺は本気ってことだよな。  「何ニヤニヤしてるんだ」  男はそこでまた、自分がイカされたことを自分で思い出してしまったらしく真っ赤になった。  「お前、また思い出したのか!脳のどこを破壊すれは記憶は消えるんだ」   頭を抑えつけて叫ばれた。  冗談じゃなさそうなのが怖い。  「違うって・・・浮気じゃないってことは、俺は本気なんだろって思っただけ」  それはそれで言ってはいけない言葉だったらしく、あの人はさらに赤くなった。  「お前は『穴』だ!」  それでも、あの人は俺を抱きしめた。  抱きしめたら顔を見られないっていう意味もあるのだろう。  「・・・誰にも触るな。誰にも触らせるな」  囁かれた。  この人は俺の意志を縛ることも出来る。  捕食者は従属者を思いのままにできる。  でも、あの人はしない。   今も、ただ俺にそう言うだけだ。  「あんただけだ」  俺もあの人を抱きしめかえした。  「・・・お前以外は抱かない」  小さな声が言った。   俺は幸せだった。  本当に。

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