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潜入13
俺は好きな部屋を使っていいと言われたので、団地の部屋の一つに入った。
女の子は掃除も手伝ってくれた。
なんとか、寝転がれる位には綺麗になった。
寒いだろうと、布団などをあの力持ちの青年が持ってきてくれた。
「冷えるから・・・」
俺には随分デカい自分の上着まで持ってきてくれた。
トイレは外で穴を掘ってするんだと、シャベルも渡された。
マジで?そう聞いたら
にこにこと笑ってた。
いや、俺はもう排泄しないからいいけどね。
「・・・ありがとう。あんたは寒くないの?」
俺は聞いた。
やはり青年もシャツ1枚だ。
「・・・オレ達はだいじょうぶ。お休み」
彼は笑顔で言って、ランプを置いて立ち去った。
ランプ、ねぇ。
電気のない世界。
皆、やはり外からの侵入に警戒しているのか、大体同じ建物の中にいる。
この上の階には皆が「リーダー」と呼ぶあの金髪の少年がいるらしい。
夕食を久しぶりに食べた。
この身体になってから食べたいとは思わなかったが、食べれないわけではない。
不信に思われるのが嫌なので、出された食事を食べたが、俺以外の誰も夕食を食べている形跡がなかった。
そう、案内された場所のどこにも調理する風景も場所もなかった。
俺に出されたのはレトルトのカレーとパックのライスだったけれど、風呂はドラム缶で沸かすような奴らが毎日これはおかしいだろう。
誰も、食べたり飲んだりしている光景を見ていない。
俺は一つの考えが頭に浮かんで離れない。
あの人は言った。
人間と捕食者は共存出来ない、と。
でも、この人達がもう人間なのではないとしたら?
食べない、飲まない、寒さを感じない。
それは人間ではないだろう。
従属者?
いや、従属者はただ死ににくいだけで人間と変わらない。
食べたり飲んだりはしないけれど、寒さは感じる。
俺、寒いし。
じゃあ、彼らは?
彼らは何だ?
捕食者と共存できるモノ。
俺は何の群れの中にいるんだ?
得体のしれない恐怖を感じた。
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