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嫉妬4
「で、どうだ?何かわかったか」
僕はガキに聞く。
これが4つ目のここに来た理由。
敵はどういうモノなのかが気になった。
ガキの胸に頭をもたれさせていた。
地面の上で二人で身体を寄せ合う。
何故かガキに抱き締められている形なのが気に入らなかったが、散々泣かしてイカせてやった後だから許す。
ガキは僕のうれしげに髪を弄ってた。
髪に何度も唇を落とされる。
嫌な気分ではない。
コイツあんなに乱れられるんだから、もう、抱かれるだけでいいと思うんだが。
「・・・ここの人たちは人間ではないかもしれない」
ガキは言った。
ガキの仮説はなかなか面白かった。
「で、どちらが捕食者だ?」
僕は聞く。
「うん・・ ・リーダーと呼ばれている金髪が主導権を握っているのは間違いないんだけど・・・」
ガキは100才の凄腕の老人の話をした。
なるほど、面白い。
その話が本当なら、僕よりも人を沢山殺した男がここにはいるわけか。
そいつが捕食者だとしたら、それはなかなか厄介だ。
ここにいる人間達が従属者ではないとしたら、その二人も従属者でも捕食者でもない可能性はある。
「どんな男だ?」
僕は聞く。
金髪のことが気になっていた。 その時のガキに浮かんだ表情が妙に胸が騒いだ。
憧れと、恐怖。
それがないまぜになった顔。
「・・・あんな優しいのに怖い人見たことない」
ガキはぼんやりと言った。
行き場のない者達を集めているソイツの話を聞いて、僕は鼻で笑った。
弱いヤツは死ねばいい。
死にさえすりゃどんなことからでも逃げられる。
死にたくなければ、殺してしまえばいいだけだ。
祈り、耐える。
バカか。
それで助けられて、ソイツのモノになる?
くだらないね。
生きたければ殺せ。
与えられなければ奪え。
邪魔するものをすべて排除すればいい。
この世界はそうやって出来ている。
「・・・あんたにはそうだろうね」
諦めたようにガキが言う。
なんだそれ。
ガキは、はっと気がついたように言った。
「・・・あんたは殺してでも生き延びたのか」
ガキの眼差しが煩い。
どうでもいいことなのに、可哀想な目で僕を見てるんじゃない。
イラついた。
「・・ ・覚えてないな」
昔のことは全部忘れた。
それでいい。
「・・・助けて、集めてソイツは何がしたい」
僕は聞く。
「・・・助けたいだけじゃないのかな」
ガキが言う。
「・・・違うな。ソイツは何かがしたいんだ。助けたいだけのヤツなんていない」
僕は断言する。
「そうなのかなぁ」
ガキは歯切れが悪い。
ムカつく。
「で、ソイツの何が怖いんだ」
僕は聞く。
ガキは黙った。
しばらく考えこんだ。
そして、痛みを吐き出すように言った。
「あの人を・・・好きになってしまいそうなのが怖い」
ガキの言葉が僕を突き刺した。
コイツ何言ってんだ。
僕の前で。
ガキは慌てて言う。
「恋愛とかじゃないよ。人間として尊敬できるというか・・・」
「・・・分かってる。お前は僕に夢中だもんな」
僕は笑った。
腑が煮えくりかえるってのはこのことだ。
腹の奥でどす黒いものがのたうちまわる。
「俺はあんたが好きなんだ。あんただけだ」
ガキが俺を抱きしめる。
その必死さは信じている。
お前はあちこち行けるタイプじゃない。
僕だけだろ。
選んでお前は僕といる。
・・・でもな、知ってるか。
好きになるかもしれない、そう思ったなら、もうそれはソイツのことが好きなんだよ。
お前はもう、その男に惹かれているんだよ。
痛みがあった。
ガキが惹かれるのが、僕にはないモノなのも分かっていたから。
お前はもう、ソイツが好きなんだよ。
人間は色んな形で人を好きになる。
恋だけじゃない。
そんなことは分かっている。
・・・つまり、僕は何をしてでもソイツを殺すってことだ。
お前が他を見ないですむように。
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