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記憶8

 ボク達の力が増しはじめた頃、ボク達を潰したいと思う奴らが現れた。  覇権争いのゲームならば当然だ。  奴らは、一人でいる時のボクらの仲間を狩り始めた。  攫われ、ボコられる。  そして、通りに全裸で晒される。  アイツは怒った。  また一人ででもそいつらのところに突っ込んで行こうとした。  ボクは止めた。  「あかん、そんなんヤラれるだけや」  「ナメられて終われるかい。こっちはもう5人ヤラれてるんや!」  アイツはキレた。   「とりあえず、絶対最低でも、二人一組で行動するんや。それにや・・・アイツらが一人やるために大勢で集まってるんやったら逆にそれを利用するんや」  ボクは言った。  ハメられたんやったら、ハメかえしたったらええ。  ボクは作戦を立てた。  一人歩くアイツを嬉しげに連中は囲んだ。  まさかアイツが一人で歩くとは思わなかったのだろう。  何度か成功したことが、彼らを増長させた。  アイツが歩く周りをついて行く。  人気のない場所で攫う。  覇権争いはリーダーを潰せば終わる。  アイツを潰して終わらせるつもりだっただろう。  なんなら、アイツを輪姦つもりだっただろう。  アイツを抱きたがっているのは、友好的な連中だけとは限らなかったから。  彼らはアイツだからこそ、攫うことに夢中になった。  だからこそ、よかった。  人気のない場所にやすやすと入り込んでくれた。  「・・ ・オレらと遊ぼうか。満足させてやるよ。アンタ、突っ込まれるのが好きなんだって?」  ソイツをとりかこんで、連中のリーダーが言った。  おそらく勃起しながら。  連中は舞い上がっていた。    アイツに挿れたくて。  多分順番さえ決めてきただろうし、普段なら来ない筈のそいつらのリーダーさえそこにいたのがその証拠だ。  リーダーを潰せば終わるのだ。  これはチャンスだった。  ボクらはソイツらの背後にいた。   「アホか。お前らなんかで、オレを満足させられるわけないやろ・・・」  アイツは妖しく笑った。  それが合図だった。    ボク達は背後からソイツらを襲いボコボコにした。  全員、裸にしてさらそうと、ボクは言った。  見せしめは必要だ。  ちゃんとやられたことをやり返すべきた。  だけどアイツは首を振った。   「あかん・・・」  そして、倒れた連中に言った。   「オレの方に来たければ来いや。オレは優しいで。悪いようにはせん・・・楽しいか?そっちにおって・・・こっちに来い」  信じられないことに、何人かは本当にボク達のところへ来た。  「オレらはクズの集まりや。でもな、クズの中で誰が偉いか競うなんてアホらしい。なんで世間の真似せなあかんねん。オレらの方は2つしかないで。オレかそれ以外や。しかもオレは別に偉いやけやないで・・・来いや」  アイツが口説いたからだ。  アイツといれば世界が変わる。  たった一人の人間がいることが、世界の見方を変えてしまう。    自分にも価値があるんじゃないかと思ってしまう。  いてもいいんだと、思わせてくれる。  また、アイツは人を集めていく。  この事件をきっかけに、周りのボクを見る目が変わった。   それまでは、ボクはアイツのおまけだった。  アイツはボクと一種に暮らし、寝ていることを隠さなかった。  わざわざ関西から連れてきた、お気に入り・・・。 性的な。  そういう認識だったと思う。  嫉妬もあっただろうし。    ボクは明らかに彼らとカラーが違った。  ボクは毎日勉強しかしていない、ガリ勉だったし、メガネに大人しい格好で、彼らとは随分見た目から違った。  背が高く、体格は良かったことにはまぁ一応の評価を貰えていたようだけど。  暴力を宗教とし、周囲から恐れられていた父親を殴り殺すまでには鍛えたのだから、まあ、当然か。  今回の作戦を立てたことから、アイツは賢いとの評価を貰えたようだ 。  それに裏表のないアイツのやり方では限界があった。  度胸も暴力も魅力も、誰に負けない男だけど、あまり賢いとは残念ながら言えなかった。  真っ直ぐすぎた。  関西でヤクザに負けたのはそのせいだろう。  筋金入りの汚いヤツらのやり口に、アイツでは太刀打ちできない。  狡さがない。  でも、ボク達が増えていけば、敵は汚いヤツらがどんどん増えていくだろう。  でも、アイツには汚れてもらうわけにはいかなかった。  アイツの望みのために。  アイツは綺麗じゃないとダメだ。  アイツの綺麗さが人を惹きつけるのだから。  だから、ボクが汚れることを決めた。  そして、アイツが汚れることを認められない連中も、それを受け入れた。   皆、アイツに綺麗でいてほしかったからだ。  ボクは、アイツの見えないところで、よごれ仕事を片付けていった。   ボクはアイツの影だった。  それで良かった。        

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