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潜入22

 積み上げられたバリケードを乗り越えて外に出た。   未練がある。  大事に扱われたいという想いがある。  大切なものだと思われたい、想いがある。  それが今出て行った世界にはあるのだ。  あの優しい人のものになりさえすれば。  その欲求は、人間ならば誰もが抱えるものじゃないか?  代えのきく消耗品として生きていくのは辛いからだ。  俺は歩く。  しばらく歩き、道の先に立っている人を見て立ち止まる。  あの人の言った通りだった。  俺の恋人が道の先にいて、俺をじっと見つめていた。  なんて顔してんだ、あんた。  そんな顔するのか、あんた。    泣きそうな顔で、怒ったような顔で、俺の恋人は俺を見ていた。   泣き出す前の子供の顔で。  走る。     俺は速い。  速く俺のあの人のところへ行くんだ。  俺はあの人を抱きしめた。  ほんの少しだけ、俺の方が高いけど、ほぼ同じ身長だから、あの人の顔はオレの顔の横にあって。  頬をすりよせる。  「あんた、なんて顔してんだ・・・」  強く抱き締める。  「・・・帰ってこないかもしれないと思った」  小さな声がした。  声が震えていた。  何、この可愛いの。  誰だよ、可愛い過ぎるだろ。     「・・・どこにも行かない」  俺は囁いた。  あの人は泣きはしなかった。  ただ、俺を強く抱き締めた。  その身体が震えていた。   思うわけだ。  こんな風だから。  大切にすると言ってもらえなくても。  大切にされてるとは思えない時があっても。  俺はこの人から離れられない。  どうしても。  

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