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前夜9

 「拘束プレイってやって見たかったんだよね」  あの人がしれっと言った。     はぁ?  俺は呆然とする。  俺の右手は手錠でつながれていた。 手錠は壁に繋がっていた。  「何、壁から出てるこの禍々しいもの。こんなのこのベッドのとこの壁にあったっけ」  俺は焦る。  デカい俺たちのダブルベッドの頭側の壁に、いかにも頑丈そうな鉄製の鉤が4つ取り付けられていた。  ちょうど、人間の手足を手錠で繋ぐのにちょうどよさそうな。  それをベッドに座ったまま鑑賞できるのに良さそうな。  その一番下の鉤の一つに、手錠で俺は右手を繋がれていた。  そうすると、ベッドに横たわって、右手を頭の方へのばしたまま手錠で固定された状態になる。  「お前が潜入している間に、犬の部下達につけてもらった。今日は片手だけだけど、今度はこの壁に裸で両手両脚つないであげるからね」  あの人が笑う。  嫌だ。  そんなプレイ。    それに大体、何でそんな変態チックなものをスーツの部下に頼むんだよ。  俺、訓練とかで顔合わす度に、「拘束プレイ・・・」とか思われるじゃないか!!  「嫌だ、離せ!」  俺は引っ張るが、これは手錠も鉤もおもちゃじゃない、本気使用なものだとわかった。  「拷問用にアイツらのとこにもこういうのあるらしいよ」  あの人はニコニコ笑った。  「止めろ、これを外せって!」  俺は本気で怒る。  あの人がマジメな顔をした。  「僕ね、セックスは楽しくしたい派でね、ぐちゃぐちゃ泣かれたり、わめかれたりするのが本当に嫌でね、だからレイプするくらいなら殺す方が好きなタイプなんだけどね」    なんだよ、そんなタイプはあんただけだ、一般論みたいに語るな!  「でもね今、お前が嫌がって叫んでるの見たら、勃ってきた。自分でも意外だけど、いいね、これ」    はぁ?  あんた何言ってんの?  上にのしかかられる。  ガチであの人のものが勃っているのがズボンごしにわかった。  引き離そうと片手で押す。  でも、片手では無理で。  「離せって!」   怒鳴る。  「ヤバい・・・興奮してきた、もっと抵抗し て暴れて」  うっとりと云われた。  ズボンごしにあの人のガチガチのモノが俺のモノにこすりつけられて、思わずうめく。  変態なのは分かっていたけれど、解っていたけど、進化までしなくていい!  バカ!  「こういうの・・・嫌だ、やめろよ」  俺は怒る。  「うん・・・分かった。じゃあ、今回だけ、ね」  あの人の綺麗な顔が近づいて、頬を撫でられ囁かれる。  やはり、綺麗で、ドキドキしてしまった。  思わず目をそらしてしまう。  あの人は俺のシャツのボタンを外して、胸を撫で始めた。  手のひらが乳首をかすめる。  そんな感覚にさえ、吐息がこぼれる。  いや、いいって言ってない、  まだ許可してないって。  逃げようとしても、手錠で身体が動かない。  「無理したら、肩が抜けるし、手首に傷がつくよ。大人しくしてて」  優しく囁かれる。  「そう思うなら、外せ・・・」  言いかけた俺の言葉をあの人はキスで塞いだ。  都合が悪い時のあの人のやり口。  淫らなキス。  悔しいけれど、気持ちいい。   「お前を逃がさないですむと思うだけで、こんなに安心できる、手錠、いいな」  あの人はキスの合間に危ういことを言いだした。  「もう、ずっと繋いでおきたい・・・」  俺の乳首をかじりながらあの人が言う。   痛くて、気持ちいい。  思わず喘いでしまう。  「俺は逃げない・・・だからこんなの必要ない」  俺はあの人の髪を撫でながら言う。  またこの人の悪い癖が出てきたのだ。   泣きそうな、拗ねたような顔をあの人はする。  納得してない。  駄目なやつだこれ。  俺をぐちゃぐちゃに抱いて、でも納得しないやつだこれ。  「ちょっとだけキスさせて」  俺はあの人の顔を片手で引き寄せてキスする。  いいかげん分かって欲しい。  あの人の不安解消のセックスより、俺のキスの方がよっぽど何かが伝わるはずだから。  まあ、テクニック的には・・・正直レベルが違うけど。  でも、あの人は俺のキスが嫌いじゃない。  あの人の俺に応えるのも、優しい。  「・・・伝わった?俺の気持ち」   俺はあの人の目を覗き込みながら聞く。  あの人が赤くなる。  「・・・どこでこういう気障なこと覚えてくるんだこのガキ」  ブツブツ言うのが可愛い。     

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