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V,S
「さあ、派手にやろか」
アイツは上機嫌だ。
いつもの悪趣味な派手なシャツが着れないこと ぶつぶつ言っていたのが嘘のように機嫌がいい。
かしこまる必要もないが、派手すぎていらない反感を買う必要もない、とボクが判断して、上品なシャツにジャケット、それに合うパンツや靴を着せてる。
コイツの言うところの「ええとこの子」みたいは格好をさせたのだ。
人はしゃべる言葉より、外見を最初の判断にする。
金髪なのはアイデンティティだと慣れない言葉まで使って拒否するので、髪の色はそのままになった。
まあ、コイツの笑顔を浮かべた顔は、人の警戒心をとくし、人の心を惹きつける。
今しているいつものチンピラみたいな服ではない、柔らかい格好はそれをさらに助けるだろう。
コイツが街のガキ達のロックスターである必要はもうない。
もう、派手な服はいらない。
最初はブウブウ文句を言っていたが、鏡をみたら機嫌が良くなった。
「悪ないやん」
ボクの見立てだ。
いいに決まっている。
「リーダーかっこいい~」
「いいって、似合う~」
「素敵!!」
女の子達の声にさらに機嫌が良くなる。
根本的に、コイツは誉められるのが大好きだ。
「・・・惚れ直したか?」
ボクにニヤリと笑った。
「・・・本当のことを言えば、ボクはいつものあんたが一番好きやけど、たまにはそんなあんたも悪ないな」
ボクは正直に言う。
「・・・服は脱がせるのが一番やもんなお前は」
顔を近づけ言われ、ドキリとさせられる。
こんな時でも、コイツは。
ボクはそれでも、軽くアイツの唇に、キスを落としておく。
女の子達がキャアキャア言ってるが、もうええ。
お前らうるさい。
「そろそろ時間や、座り 」
ここには電気は通ってないが、電気が全くないわけではない。
ガソリンで動く、発電機かある。
それをつかって充電したスマホを取り出す。
良い時代になったもんや。
スマホ一つあれば、中継できる。
ここの部屋はスマホの電波も届く。
「用意できたって言ってるよ」
街の仲間が言葉を、女の子の一人が中継してくれた。
街でパソコンに繋がっている仲間がこのスマホの中継をネットにつないでくれることになっていた。
「リーダー、始めるよ」
携帯を固定し、中継がはじまる。
アイツはカメラに向かってにこやかに笑った。
楽しそうな笑顔は心からのもので、アイツがこれを心から楽しんでいるのがわかった。
「こんにちは。僕はあなた達にお知らせしたいことがあります」
この中継は有名ブロガーのブログ、SNSの有名アカウントを乗っ取り、誘導、中継されていた。
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