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V.S 14

 ボクは破れた窓から外をアイツと一緒に眺めた。  「殺戮大会やな」  アイツが無邪気に笑った。  「・・・コイツら、さっきの奴らとは別口やな、甘すぎる」  ボクは呟く。    巨大な触手の固まりは、建物の外にいた者達を惨殺していた。  もう、栄養はいらない。  ただ殺すだけだ。  「・・・助け、て」  カチカチともう弾の出ない銃の引き金を引きながら、男は虚ろな目で哀願した。  目の前の巨大な生き物に。  巨大な生き物は、40人の身体からできていた。  植物化した人間。 細い触手のような植物が巧妙に絡まり合い人間のような姿に擬態していたのた。  今、擬態を解き、本来の触手のような植物に戻った仲間達は、巨大な生き物になっていた。  細い触手が蠢きながら、からまりあっていることで出来上がった巨大な生き物に。  触手の一部が、男のまえで重なりあった。  そして、まるで溶け合うように大きな牙のある口を形成する。    キシャア  その巨大な口は男に向かって吠えた。  「あっ・・・」  男は絶望に涙を流す。  その手から銃は力無く落ちた。  頭にかぶりつかれた。  頭が半分千切られ、男は血を吹き出しながら倒れていく。    触手は反対側で違う男を貫いていた。  腹を貫かれ、宙に吊されたまま、男は呻いていた。  「こんな・・の、ウ・・ソだ・・・」  男の死にゆく目は現実を拒否していた。    隠れているものは触手に、引きずりだされ、引きちぎられ、貫かれていく。  圧倒的な虐殺しかそこにはなかった。    キシャア  キシャア    歓喜の声のようなモノが響く。  触手が蠢きながらたてる音だ。  ずっと殺され続けてきた者達が、殺し返すことに成功した歓喜の歌だ。  喜びの歌だ。  それはボクには素晴らしく聞こえた。

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