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V.S 17

 僕は黙って殺され続けた。  腹をえぐられ、触手が背中まで抜けていく感触に耐える。  触手が内臓を傷つけながら、身体の中を擦りあげていく。   ぐちゃぐちゃと中をかき回される。  「うわぁぁ」  情けない声が出る。  苦しい。  痛い。  背中からではなく、腹からも入ってくる。  「ふぅ、あ・・・」  もう呻き声さえ出ない。  「ぐふぅ」  背中から、腹から内臓を潰しながら、触手が蠢きつづける。  手足を千切られる肉が切れる感触、首をねじ切られ、骨が砕ける音を体内から聞く。  理性のない触手の化け物は、僕を何度も貫いた。  目から、口から、耳から、腹から侵入し貫かれた。  悲鳴を上げ、耐え続ける。  僕がいつもしていることを逆にやられているわけだ。  罰が当たったか、と皮肉に思う。  ガキにだってまだ貫かせたことないのに、なんてことも少し考えた。  ガキのモノに貫かれる僕?  そんな考えどこから来た。  ・・・いや、させないから。  不死身ってのは永遠に痛みに耐えなきゃいけないってことだ。  必要なら耐える。  僕は突入した連中に紛れてここに来た。  おかげで侵入はたやすかった。  連中を殺す気だった彼らはあえてこいつらを中に入れるとわかっていたからだ。  そして、随分予想とは違ったが殺戮が始まった・・・。  コイツらの凄まじさは知った。  こんな集合体になるとは・・・。  でもそれはむしろ、好都合だった。    さあ、早くやってこい。   不死身の僕がここにいることを気づかれる前に、早く来い。  犬はやるだろう。  ここで犬がひいたら負けだ。  犬が犬であることを忘れて、可愛い部下を殺すのを止めたら終わりだ。  犬。  僕はお前が「犬」であることが本当に気に入っているんだぜ。  内臓を引きずり出されながら僕は思った。  苦痛に悲鳴が出る。  こんな真似。  こんな真似。  必要じゃなきゃ、絶対にしない。  ヘリコプターの音がした。  来た。  さっき屋上からヘリコプターを撃ち落としたばかりなのに、とお前達は思うだろ? 葉っぱ人間ども。  でも、あえてやってくるヘリコプターを放置できないだろ?  ヘリコプターを撃ち落とすため、ギリギリまで近寄るのを待つだろ?    真上に来たヘリコプター。  ここで撃っても、飛んでいるヘリコプターは動きながら落ちるからヘリコプター自体を武器に使うのは難しい。  それどころか、触手達は絡まり合い、ヘリコプターへと空へ伸びていっている。  宙で捉え、地面に引きずり落とす気だ。    ヘリで特攻させるには技術が必要すぎる。    だから、今だ。  今、押すんだ、犬。  お前の可愛い部下を殺すスイッチを。    ヘリが触手に覆われていくのを、触手に貫かれながら見ていた。  空へ向かって伸びていく触手はまるで空を犯すペニスみたいだと僕は思った。    押せ、犬  僕は思った。 離れた場所で。 部下が飛ばすヘリコプターをみつめながら 犬はスイッチを押した。      

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