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V.S 21

 金髪は平然と立っていた。  隠れる気配もない。  こちらはコソコソ隠れているのにな。  「お前の右手、おもろいな」  話かけられる。  刀に変えた右手を見られたのはまずかった。  僕の能力の一つがバレてしまった。  僕の能力。  「武器化」  右手を「何でも貫く刀」「何でも撃ち抜く銃」に変えられる能力だ。  正直、捕食者の中ではものすごく低い能力だ。   ただ、僕の銃は捕食者を消すことができる。  僕が撃った銃は当たった場所の、直径50cm程の球ほどの範囲を消し去る。  消えたものがどうなったのかは誰にもわからない。  不死身の捕食者も何度か撃てば消え去る。  ただし、射程距離は短く、しかも一度撃てば次撃つまでに10分ほどかかる。  ものすごく使い勝手が悪い武器だ。  なので、出来るだけ敵には能力について知られたくない。  敵の能力も良くわからないのなら、なおさらだ。  屋上のジジイは厄介だ。  撃たれたところで死なないが、撃たれたらやはり反応が遅れる。  向こうが動けるだけに命とりになる。  「・・・お前は僕の味方か?」  ガキに尋ねる。  「今回は不本意だけどね・・・間に合わなかったし」  ガキは悲しげに触手のなれの果てへ目をやった。  おい、ソイツらは僕の身体を好きにした奴らだぞ。  お前以上に僕の身体を好きにしたんだぞ。  僕は不満に思う。   「あんたに言いたいことはいっぱいある。納得もしてない。でも、あんたが俺の知らないとこで死ぬのも、俺の目の前で死ぬのも絶対に嫌だ」  ガキが言った。  「あんたを助ける」  その目には迷いはなかった。  「・・・」  僕は笑ってしまったかもしれない。  そんな目をして。  そんなことを言うのか。  ・・・まいった。  嬉しい。  「・・・屋上のジジイをなんとかしろ」    僕は言う。  とにかくしなきゃいけないことはある。  正直、ガキと犬が来てくれたのは助かった。   これで3対3だ。  もっとも向こうは化け物三匹。  こちらは一人は素人、一人は人間だけど。  「お前は速い。あのジジイみたいな射撃の名人は予測で撃つ。お前の速さは予測を超える。屋上まで一気に駆け上がれ」  「犬、お前もガキがジジイを引きつけてる間に屋上にあがれ。燃やすもんは持って来てるんだろ。アイツらには銃は効かない。ジジイをもやせ」  僕は犬にガキの援護をさせることにした。   「これを持って行け。捕食者、従属者がわかり次第、捕食者を撃つんだ」  射撃は僕より犬のが上手い。  捕食者の動きを止める銃を犬に渡す。  「捕食者と従属者をあんた一人で?」  ガキが心配そうに言う。  「・・・今回は、全部一人でするつもりだったんだ、大丈夫だ」  僕は言う。  さあ、始めよう。  

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