103 / 151

V.S 27

 肩から落ちて両肩が砕かれた。  じいさんには落ちる衝撃はたいしたことがなかったらしい。   彼らは元々触手が集まり人間に擬態しているいきものだ。  落下の衝撃は俺に比べたら問題ないのだろう。  彼らには骨も内蔵もないのだから。  俺は違う。  両肩が砕かれた痛みに呻く。  でも、離さない。  脚をからませて逃がさない。  この人を自由にしたら、あの人が困る。  俺は捕食者であるあの人程、早く回復はしない。  「・・・離せガキ」  じいさんが言った。  起き上がろうとした。  スゴイ力だ。  肘で脇を突かれた。    あばらが折れる。  激痛が走る。   でも離さない。    「離せ!」  顔面に頭突きが入れられた。    軟骨が折れる音がした。鼻が曲がったのがわかる。  駆けてくるスーツが見えた。  「スーツ、俺ごと燃やせ!!」  俺は血でむせながら叫んだ。  あの人がスーツに言っていた。  「燃やせるものを持ってきてるだろうな」って。  おそらく、スーツは持っている。  「ふざけるな!」  俺の言葉にじいさんは、また頭をぶつけた。  頬骨が折れる音がした。  それでも俺は離さない。   スーツはそこにいた。  「俺ごと燃やせ!」  俺は怒鳴った。 や  スーツはポケットから小さな金属製の入れ物をとりだした。  映画とかで、ウイスキーとかが入っているヤツだ。   スーツはそれを俺達に振りかけた。  揮発性の匂いがした。  そしてスーツはマッチを持ち、火をつけ一瞬ためらった。  俺を見て躊躇した。  「いいから、燃やせ!」  俺はさけんだ。  逃げられてしまう。   スーツはマッチから手を離した。  スーツあんた、なんて目してんだ。  大丈夫だから。   俺は不死身だから。  不死身・・・。  マッチが俺に落ち、炎が燃え広がり、俺はあまりの苦痛に叫んだ。

ともだちにシェアしよう!