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V.S 28

 思った以上の苦痛だった。  それでもの俺はじいさんを離さなかった。  確実に燃えるまで。  炎がじいさんをつつみこんだ時、やっと俺はじいさんを離した。   じいさんは燃えていたけれど、俺よりは痛みを感じてはいないようだった。  植物だからだろうか。  「・・・テメェ、なんでそこまでする・・・」  炎に包まれながら言った。  俺は答えられるはずがない。  俺は肌を熱にちぢこませ、肉が焼ける音をさせながら焼かれているのだから。  髪が燃える。    熱い  熱い  助けて・・・  ぐぁぁああ    俺は獣のように叫んだ。  不意にピンクの煙が吹き付けられる。  スーツが建物の中から消火器を見つけてきたのだ。  火が消えた。    俺はやっと息ができた。  自分が焼けていた臭いに吐き気がする。  じいさんはまだ炎に包まれていたが、俺とは違い綺麗だった。   木が燃えるみたいに。   炎を纏い立っていた。  「・・・何でそこまでする」  黒く焦げた俺に、じいさんはまた尋ねた。  「・・・惚れた相手を守るのに理由がいるのかよ」  俺は言った。   焼けただれたままで。  声がやっと出た。  熱で肺まで焼けてる。  「・・・違いない」  じいさんは笑った。  大声で笑った。  燃えながら笑った。    「・・・オレもそうできていたらな・・・」  そう呟いた気がする。  紙が燃えるように、その姿は炎に溶けていった。    「あの人のところに行ってくれ!」  俺はスーツに叫んだ。  俺はまだまだ回復に時間がかかる。 動けないんだ。

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