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V.S 29

 僕は金髪の蹴りを避ける。  蹴りは仕込み靴のおかげで当った場所を確実に切り裂く。  軌道を予測し、間合いを外せ。  少なくとも、避けることに専念すれば、よけられる。  避けながら、地面に落ちている斬られた左手に、断面近づける。  左手は自ら蠢き、飛びつき、くっついてくる。  僕たちはバラバラになっても、身体が自動的に集まり元に戻る。  ほら、もうくっついた。  「避けるだけなら、オレをやっつけられへんで」  金髪が笑いながら言う。  蹴りが頬を掠めた。  頬がぱっくり切れる。  悔しいが正々堂々と戦うと金髪の方が僕より強い。 攻撃の軌道がおかしいのだ。 微妙にしならせ軌道を変えてる。 関節と筋肉がおかしい。  それにもともと僕は背後から物陰から、油断したところから、命を奪うのを最も得意としているからだ。   でも、わかってきたことがある。  コイツなのか、相方なのかはわからないが僕を変化させる能力を使うには離れていては無理だと言うことだ。  僕をコイツらは、植物のような人間に変えることができる。  人間をそういう触手の化け物に変えたように。  僕をそういうモノに変えてしまえば、僕を「捕食者」でなくしてしまえば、僕をコイツらは殺せるわけだ。  捕食者の不死身を失わせる能力。    確かに恐ろしい能力だが、僕の消し去る銃と同じで、発動させるにはそれなりの条件がいることはわかった。  使ってこないということはそういうことだ。  僕がコイツの手足を切り動けなくしてから、銃を撃とうとしているように、コイツらも僕を動けなくしてからその力を発動させるつもりだろう。  つまり、こういう風に戦えている限りはあいつらの能力は発動されないわけだ。  また蹴りがとんでくる。  今度は前髪が切り裂かれた。  でも、このままじゃ、やられるのはこっちだ。  無傷で済むとは最初から思っちゃいない。

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