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記憶18

 ボクがアイツの身体に溺れる日々は、ボク達の敵と戦う日々でもあって。  暴力団でこそなかったが、ボク達が殺した男は大人の犯罪集団のトップだったのだ。  暴力団ではないことはボク達に良いことではなかった。  暴力団と言う枠を外れた彼らは堅気の顔も使えるからこそ、やれることは多かったからだ。  ボクら程度のガキの集団を潰すことは難しくなかったはずだ。  ただ、ボクらはとことん戦った。  アイツの言う通りだった。  アイツと一緒に死ぬのが嫌なヤツなど、一人もいなかった。  皆ボクと同じだった。  アイツと出会うまでの人生。  そんなのは生きてさえいなかった。  皆、アイツと出会って知った。  「生きてる」こと。  アイツは教えてくれた。  ボク達がただいたぶられ、従わされるだけの生き物ではないことを。  あのまま惨めに生きるより、コイツと戦って死にたいと皆願った。  何人も死んだ。    でも何人も殺した。  ボクらは引く気などなかった。  ボクは知っている。    残酷に拷問され殺された仲間が、その最中にもそれでもアイツと出会ったことを後悔などしなかっただろうと。  助けが間に合わず、指を潰され、タマを潰されていた仲間は、それでもアイツの腕の中で嬉しそうに死んだ。  「オレはあんたの役に立てた?」  まだ15のガキが言った。  ぼこぼこに殴られ、腫れあがった顔で。  耳や鼻も削がれていた。  アイツにボクみたいに拾われた。  アイツに憧れ続けていた。    行く場所のないガキの一人だった。   震える瞳がアイツを見ていた。  役立たずと罵られ、誰にも必要とされていなかったガキ。  アイツに恋をしているのは誰の目にも明らかだった。  「立てたで。ありがとさん。もう、ゆっくり休み・・・」  アイツは優しく微笑んだ。  アイツの腕のなかで死んだ。  幸せそうに。  嬉しそうに。  多分、ガキにとっての天国はそこだったのだろう。  ボクはそっと嫉妬した。     それが始まらなかったなら。  ボク達はどうなっていたのだろう。  ボク達は大人達に殺されたのか。  それとも、大人達を倒し、新しい暴力集団として君臨したのか。  それはボクにはわからない。  ただ、それが起こった。  それ、がボク達の全てをかえた。    血まみれの記憶。  ボク達が人間だった日の最後の記憶。

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