114 / 151
V.S 34
「それでどうするんだ」
着替えた少年が言う。
まだ煤けて黒いが水がないから仕方がない。
「ダサ。こんな服嫌だ」
男は文句ばかり言っている。
この男は格好にものすごいこだわりのあることは知っている。
「あんた向けの服なんかここに置いてあるはずがないだろ」
少年に怒られる。
男も血で汚れたままだ。
人間は私だけなので、喉の渇きを覚えるが彼らは何ともないだろう。
作戦中、飲まず食わずは仕方ない。
だがこういう時、人間ではない彼らがうらやましい。
「・・・で、どうする。上は爆撃を考えている。もちろん、責任を取りたくないから出来るだけしたくもないらしいが」
私は携帯する無線からの連絡を伝える。
「もう少し待てと言っておけ。爆撃までしたのに、アイツら逃がしたくないならな」
男が言った。
「能力が何なのか未だにわからないなら、爆撃自体を無効にされる可能性もあるからな」
そうだ。
彼らは殺し回ったが、殺したのは彼らが変化させて樹化人間達だ。
彼ら自身がどう戦うのかはまだわからない。
樹化させる能力は、彼ら能力の一端だとしたら?
男の能力「武器化」さえ「刀」だけでなく「銃」もあるのだ。
関連のある複数の能力を持つ捕食者は存在している。
ヘリコプターにむかって伸びていった樹下人間達の触手を思い出す。
もう少し爆発が遅かったならば、触手に囲まれ、液体窒素の効果は薄かったかもしれない。
爆撃機で空から攻撃というのが、本当に安全な攻撃なのかもわからないのだ。
「・・・で、どうする。相手の出方待ちか?」
私は尋ねる。
「いや、先手を打つ。攻撃の基本から行こう」
男がニヤリと笑った。
極悪人の笑顔だ。
「攻撃は一番弱いところからな」
男は言った。
ともだちにシェアしよう!