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V.S 35

 作戦を言う前にしておきたいことがあった。  僕はガキを抱き寄せた。   犬の前で。  「・・・なんだよ、急に」  ガキが眉を寄せる。  最近、随分調子に乗っている。  そこが可愛くなってしまっているのを認めざるを得ないのだけど。  「うるさい、口開けろ」  顎を掴んで口を開けさせ、唇で口を塞ぐ。   犬に見せておかなければ。  コレは僕のだ。    僕の穴だ。  キス一つで僕にとろける、僕の穴だ。  舌を入れようとする前に、後頭部を捕まれた。  ガキの方から舌を入れられた。  ガキに優しいキスをされる。  調子が狂う。  違う。   こういうのじゃない。  ちょっと待て。  強く抱きしめられる。  身体自体の力は、ガキの方が強くなっていることを思い出した。  いや、でも外せるけど、でも。  ガキが股間を僕の股間に押しつけてきた。  固くなっていた。  僕と同じで。  グリグリと擦られる。  声がでそうになる。  キスは優しい。  いや、違う・・・。  これは違う・・・。  唇が離された。  「前から言おうと思ってたんだけど、オレはあんたの何?」  至近距離で問われる。  何でこんな時に、こんなとこでいきなり・・・。  いや、キスしようとしたのは僕だけど。  僕は顔が赤くなっているのがわかる。  「お前は僕の穴・・・」  言いかけて、また唇を塞がれる。  優しいキスに流される。  いや、ガキを溶かしてしまうのは簡単なんだ。  ただ、ガキにキスされるのが、優しくキスされるのが・・・嫌じゃないんだ。  唇を離して、ガキが怒鳴った。  「違うだろ!俺はあんたの恋人だろ!」  抱きしめられる。  僕は。  僕は。  困ってしまった。  どう答えればいいんだ。  震えながら抱きしめられて、僕は・・・。  「・・・お前は僕の恋人だ」  自分が何を言っているのかわからなかった。  顔が赤くなる。  違う。  違う。  こんな予定ではなかった。  「・・・自力で恋人まで昇格したな」  犬がボソリとつぶやいていた。  なぜか同情するように僕を見る。  いや、違う。  犬の前で見せつけるつもりだったがこれは違う。  僕は呆然としたまま抱きしめられていた。

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