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V.S 41

 それは、木の根の様だった。  地面から飛び出したそれは、地面から伸び、僕を貫いた。  もう放ってしまっていた弾は金髪をそれて地面に当たり、球状に地面を消滅させた。  僕は両手両脚をソレに貫かれ、宙吊りにされた。  また、貫かれるのかよ。  何より、後10分は銃が撃てないのが最悪だ。  僕の右手を変化させた銃は直径50cmの球状に当たったものを消し去る。  ただ、一度撃つと次は10分ほど経たないと使えない。  コレは何だ。  葉っぱ人間達の触手とは違う・・・。  本物の木の根に見える・・・。  金髪の周りの地面が盛り上がり、根が飛び出した。  そして僕とは違い、包むように金髪を持ち上げその手足をソッとくっつけた。  手足がくっつく。  僕は動こうとした。  だが動かない。  根がまた地面から飛び出し、僕の腹を貫いた。  今日は何度も味わう感触だ。  「また、かよ・・・」  僕は呻いた。  「ガキ!犬!近寄るな!」  怒鳴った。  走ってこようとしたガキが止まる。  犬とガキが大丈夫ということは、これには範囲があるってことだ。  これが、コイツの、捕食者の能力か。  ゆっくり手足を繋いだ金髪は、ふわりと根に地面に下ろされた。   「やってくれたやん」  金髪が笑う。  ほぼ回復されたか。  僕はコイツの能力を考察する。  僕の手足を貫く根は本物の根の匂いがした。  土の匂い、長い間、土の中にいた気配がした。  本物の根。  ここは元公園だ。  燃やした葉っぱ人間達以外にも木はある。  樹と関連のある能力だろう。  この公園の土の下には樹の根が大量に、からまっているだろう。  「樹を操っている。近寄るな!」  僕はガキとスーツに叫んだ。  金髪はにっこり笑った。  「当たりやで、でも、距離はあんまり関係ないねんな」 わざわざ教えてくれる。  「手出すんやない、コイツとはさしで勝負をつけるんや」  金髪が振り返って言った。  金髪の視線の先には、金髪の相方の背の高い、無気味な男が樹のそばに寄りかかるように立っていた。  いつの間にいたのだろう。  本当に気配がしない。  相変わらず、無表情だ。  その目にすら感情がない。  整っているだけに気味が悪い。  男は返事もしなかったが、動こうとしなかったから聞き入れたのだろう。  サシで勝負だと?  舐められたな。  だが、有り難い。  振り返る。  犬はさっさと消えていた。    正しい。  人間である犬はここにいても役に立たない。  距離が関係ないと言う言葉が本当なら、出来るだけ離れている方がいい。  でもガキは逃げずに立ち尽くしている。  ・・・困っているのか。  僕がヤラレてても、コイツに情があるか?  まだ迷うか?    「オレは言うたはずや。オレはお前が欲しい。こっちへ来い。言うたやろ、お前が誰を殺したとしても、どれだけオレらと敵対しても、お前さえ望めばかまわせんって。オレのもんになり。こんな男どこがいいんや」  よりにもよって金髪は僕の目の前でガキを口説きはじめた。  「死ぬかもしれんよ、オレとおったら。でも、自分、こんな胸糞悪い想いをして生きていきたいんか?」  燃やした葉っぱ人間達を金髪は指差した。  ガキの目が揺れる。    少し前まで泣いていた目が揺れる。  「こんなもんが正義か?それでええんか?オレと来い。少なくとも、こんな想いはさせへん。オレらと行こう」  金髪はガキに手を伸ばす。  二人の距離は離れていた。   でも、金髪はガキが歩いてその手をとることを確信しているかのようだった。  ガキが焼け落ちた葉っぱ人間達を見た。  ガキが自分の手を見つめた。  まるで血塗られているように。  痛ましい目だった。  ガキは深く傷付いていた。  ガキにはそれ程までに耐えられないことだったのだとわかる。  ガキが頭を抱えた。  うずくまる。  そんなにも辛かったか。  無抵抗なモノを一方的に殺すことが。  僕には解らない。  僕はやらなけらばならないことをしただけだ。  「こっちに来い・・・」  金髪が言った。  ガキに伸ばされた指。        

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