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記憶 21

 血飛沫と、怒声、悲鳴。  銃声。   世界は赤い。  真っ赤だった。  そして、焼かれるような熱さ。  腹に空いた穴。  に手をやる。  何人か殺したナイフをもう捨てる。  アイツを探す。  倒れていた。    動かない。  死んだのか?  そこまで這おうとする。  また撃たれた。  背中に熱さが走る。  もう仲間はほとんど死んだだろう。  アイツ。  アイツのそばに。   「死にたくねぇよ・・・」  ボクが刺したヤツがすぐ側で泣いていた。  腹の中身まで取り出してやったから、助からないだろう。  笑い声がして、またボクは撃たれた。    熱さと痛み。  笑い声は怒りをボクの中からひきだした。  ただアイツと死ねたらいいと思ってた。  もう、それたけで満足だと思ってた。  違った。  父親はボクを笑いながら殴った。   妹を笑いながら犯した。  笑うな。    笑うなら死ね。  腹を割かれ、内蔵を全て出して死ね。  生きたまま手足を引きちぎられて死ね。  懇願しながらも頭を砕かれて死ね。  怒りが込み上げてきた。  この男達にではなく、人間全てに。  それには驚くべきことにアイツさえ入っていた。    怒り?  いや、違う。  欲望だ。  殺したい。  殺し尽くしたい。   一人モ生カシテハオカナイ    ボクの中でそれが言った。    ボクは賛同した。  誰一人 生カシテオカナイ   ボクはそれを自分の中で育てていたのだ。  生まれた時からソレはボクの中にいた。   そして、今それは育った。  ソイツはボクの中で育っていったのだ。  ボクの外で起こったこととは関係なく。  ボクの苦しみや憎しみや愛さえ関係なく。  ソレは、そして、今、目覚めた。  ただ無邪気に思った。  「全て殺そう」

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