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記憶 22
ボクは蛹だったのだ。
ソイツが完全になるまでの。
ボクがぐちゃぐちゃに溶かされていった。
ボクでありながら、ボクでないものになっていくために。
ソレはボクの過去と記憶を全て吸収した。
ボクはソレだった。
ソレはボクだった。
ソレは、撃たれ血が流れ出す、ボクの身体の中で最終段階を完了した。
傍目からはわからないままで。
そう、ドクンと身体が波打ったくらいしか気づかなかっただろう。
「まだ生きていたか」
そういう声が聞こえ、また背中から撃たれた。
衝撃でからだは跳ねた。
でも。
流れ出してきた血がすぐに止まったのがわかった。
身体にあけられた穴が塞がったのがわかった。
そして、なによりボクの中で欲望が満ちていた。
欲望というよりは飢え。
ボクは必要としていた。
人間の死を必要としていた。
飢えていた。
ボクはゆっくりと目を開けた。
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