135 / 151

記憶24

 それは至福の時間だった。  走り出し逃げ出す者がほとんどだったが、逃がしたりなどしない。  ボクは根だった。  身体ではなく、根を通してその感覚を味わっていた。  逃げ出す男の脚に絡みつく。  引き倒され泣き叫ぶ男の手足に巻きつき、肉が潰れ、千切れるほどに締め付けた。  ぶちっ  肉が潰れる音とともに、血は吹き出し、手足は身体から離された。  それはリズムだった。   躍動する殺意だった。  流れだす血液さえ、メロディだった。  ダン  根はそいつらの腹を貫く。    ダン  目を突き破り、脳を掻きまわす。  ダン  口から背まで突き破る。  そのリズムの軽快さに、その官能に、ボクは酔いしれた。  リズムは身体の奥の快楽を呼び起こす。  そのリズムはボクのソコが立ち上がるほどの快楽だった。  おびただしいほどの血の香りに酔いしれた。  肉をちぎり、骨を砕く感触を甘く味わった。  苦痛に蠢く身体、千切れるたびに震える身体の感触は、まるで収縮する孔の中にいるような快楽だった。  悲鳴は甘く、まるであの時の嬌声よりも甘く耳からボクを溶かした。  殺戮は快楽だった。  凄まじく気持ちよかった。    何度も何度も貫いた。  根で貫くことも、アレで貫くことも変わりなく、穴に入れるよりも、穴を空けることの方が強烈な締めつけがあった。  何より、人の苦痛こそが脳をしびれさせるほどの・・・快感だった。  気持ちよかった。    殺し尽くした後、ボクは射精した。  今までで一番気持ちよかった。  あんなに愛しているアイツの中でした時よりも。  でも、その後、ボクは気付いてしまった。  殺しきれていないことに。  まだいた。    死んでいなかったモノが。    わずかに声をあげ、身動ぎしたのは・・・。  アイツだった。  

ともだちにシェアしよう!