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王国の終焉2

 分からなかった。  全く読めなかった。   殺意などなかった。  ボクはガキか首をはねられるのを呆然と見ていた。  間合いの詰め方、ナイフを抜くタイミング、全てが予測不能だった。  暗殺専門のこの僕が完全にしてやられた。  僕は・・・、この僕は立ち尽くした。  ガキの首が切り離されたのに、ガキが殺されたのに。  「あんたにはボクと同じ気持ちを味わってもらわないと公平ちゃうな・・・それくらいは当然ちゃう?」  男は言った。  そうだ。  僕はコイツの気配を何度か読めなかったのに、油断した。  僕としたことが。  でもそんなことは、そんなことはどうでもいい。  倒れたガキは首の断面を見せていた。    ガキがいない。  ガキが殺された。    そんなそんな。  僕は全ての思考が止まる。    「悪いなぁ。別に死ぬのは構わへんけど、やられたことはやり返す主義なんや。ほな、殺し」  男はナイフ、というよりも鉈か山刀、を投げ捨てた。  僕はそんなことすらどうでも良かった。    「何している撃て!」  犬が叫ぶがそんなものどうでも良かった。  首を切り離されれば、従属者は死ぬ。  首の断面が見える。  ガキは死んだのか?  僕は腑抜けたように座りこんだ。  ダメだ。    「辛いなぁ、長い年月たった一人で生きていくんわなぁ」  心から同情するように男は言った。  本当に心から同情されているのがわかる。  そうだ、この世界に僕の気持ちがわかるのはこの男だけなのだ。    ガキがいない?  僕は胸を押さえた。  苦しい。  苦しい。  耐えられない。  「な、生きていたいなんて思われへんやろ?」  男の言葉は事実だった。

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