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渉太は浮かれ半分、不安半分で告白の翌日、手に汗握る思いをしながらも音楽室の扉を開いた。尚弥は普段通りにピアノを弾いていて、渉太が静かに入って来てからも特に変わった様子はなかった。 昨日の尚弥の態度は裏返しで、本当は嫌で避けられてしまうかもしれないと覚悟していただけに拍子抜けする。 曲を終え第一声に困っていると「今日はどうだった?」と尚弥から話しかけてきたので 咄嗟に「相変わらず上手いよ」と在り来りな返事しかできなかった。 尚弥の様子を探りながら会話をしている時も特に変わった様子もなく、色恋を匂わせる雰囲気はなく好きなもの、音楽の話、自分の話をする。 そうやって月日が流れていくうちに、告白後の気まずさも、結局聞けてはいない尚弥の気持ちに関しても気にしなくなっていた。 尚弥のことは好きだし、話してると心地いい、何より好きなものの話が出来るから楽しかった。 だから掘り返すように改めて尚弥の意思を確かめることはせず、敢えて今までと関係は変わらず接する。 渉太にとって何の変わりなく尚弥と話していられるだけで自分の存在を、気持ちを、尚哉に肯定されている気になれていたから、それはそれで良かった。 1年が終わり2年になるとクラス替えになった。ぼんやりと願っていて余り期待はしていなかったが、尚弥と同じクラスなれた。 偶然なのか旗また運命と呼んでいいのか·····。 嬉しかった渉太はクラス替えの掲示板前で両手を挙げて喜んでいると尚弥は優しく微笑んでハイタッチをしてくれる。 渉太が1年の時の同じクラスで仲良かった友達も一緒で、自然と行動は友達3人組と尚弥で共にするようになっていた。

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