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頑なに踏ん張ってみたが、強引に左右に揺さぶられてはバランスを崩して尻もちをついてしまった。
腕は二人に掴まれたまま、完全に無防備な姿になっても、少しの抵抗心で膝を閉じた。
羞恥で顔が熱くなるのと迫り来る日野が怖い·····。尚弥に助けを求めたくてもいつの間にか隣から居なくなっていた。
嫌だ·····。
日野は渉太の目の前までくると、目線を合わせるように屈んではニタニタと笑みを浮かべていた。見慣れた友人の姿なのに、どこか怖いと感じてしまう。
腿に力を入れたところで成長期真っ只中の男子の腕の力に勝てるわけもなく、呆気なく膝が開かれては、中心部を制服の上から強い力で握ってきた。
「たっ··········」
「うわっマジかよ。渉太ってそっちだったの?」
握る掌に圧迫されたかと思えば親指で先端を擦ってくる。
「·····っ」
触って、嘲笑いながらも指でなぞって刺激を与えてくるからスラックスの中でどんどん張り詰めてくるのが分かった。
「違うっ『そうだよ』」
抵抗して身を捩らせながらも日野の問いかけに必死で否定してみるが、それに被せるかのように尚弥の声が聞こえてきた。
手が止まり、声のする背後の方を日野が向くと尚弥が高みの見物かのように机に腰を下ろしているのが目に移る。
助けるどころかこの状況を楽しんでいるかのようだった。
「だって渉太、僕に告ってきたから」
一番誰にも知られたくなかったことを、なんの躊躇いもなく尚弥の口から友人達へと広まる。友人だけではなく、タダならぬ雰囲気を察知したのか、近くで屯っていたクラスメイトから冷たい視線を感じていた。
「藤咲、それガチ?」
嘘ではないから否定は出来ずに黙って尚弥の言い分を聞いていることしかない。
周りの視線の為に違うなんて言いたくなった。
自分が尚弥のことが好きで告白したことを間違っていたと、自分のことを否定するみたいで出来なかった。
「うん、僕のこと好きだって無理やりキスもしてきた」
一言一言発する度に皮肉にも尚弥は楽しそうに口元を上げる。
尚弥の発言で腕を掴んでいた友人達のドン引いた声が聴こえ、遠くで傍観していた生徒が仲間内でザワきだした。
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