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尚弥は頭がいいし、女子にもモテるし、普段は群れないように見えても何処か人間的に魅力があるのか周りを簡単に巻き込む力がある。圧倒的に敵についたら不利になるタイプだ。
尚弥に告白したのは本当だけど、あの時キスしたのは尚弥からだ。無理矢理なんてするわけがない。
まるで自分だけが、そうだと言っているかような物言いに、渉太は心臓が握り潰されるかのように痛くて、呼吸が浅くなっていた。
「あれは尚弥から·····」
「でも、渉太は男の子に触られる方が嬉しいんでしょ?」
渉太の言い分など受け付けないかのように、言葉で遮られる。
好きな人が同性だったからってそうと決まったわけじゃない。
触られるなんて誰でもいい訳じゃない。
自分は尚弥にそうゆう目で見られていたのか。
「違う·····そういうつもりで俺は告白した訳じゃ·····」
尚弥がただ単純に好きだっただけ·····
そして尚弥も同じ気持ちだと思ったから·····
「うっさ。藤咲がゲイなわけねぇだろ。自分がゲイだからって巻き込むなよ。それに、お前のソレ説得力ねーから。」
日野が話に割り込んできて尚弥を庇護してきたので完全に自分には味方が居なくなったと悟った。
事実と真逆な自分の人物像が尚弥によって作られていく。
きっとよく自分のことを知らないクラスメイトは自分に対して「ゲイで己の欲望のために尚弥を道連れにした酷いやつ」と捉えられたに違いなかった。
ちゃんと尚弥と話がしたい。
尚弥が嫌だって言うなら無理矢理なんかしたりしない。
尚弥がどう思っているのか尚弥の気持ちをちゃんと知りたい·····。
立ち上がろうとするが、日野が覆いかぶさったてきて尚弥の元まで行こうに行けない·····。
「渉太、そんなに欲求不満なら手伝ってやろうか?」
友人達の視線が痛い.......。
そして明らかに自分のことを初めて手にした玩具のように興味本位で見てくる日野が怖い。
完全に自分を軽蔑視してる岡本が「日野、周りが見てるやめとけよ。」なんて話している隙を突いては、渉太は日野の腹部を蹴りあげた。
日野が尻もちを突いたのをいいことに腕を思い切り自分の身体へ引き寄せたらあっさりと二人の手が離れていく。
一刻も早くここから逃げたい·····。
渉太は前屈みで腹部を抱えて自分の昂りを隠しては一目散に教室を出た。
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