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前に進みたい

-------------------- 思い出したくもないから頑なに閉ざしていた筈の過去なのに外への開放感からか、夜空に輝く星たちがそうさせているのか·····。 隣にいる律仁さんの雰囲気に促されては「高校生の時、好きな人が居たんです·····」と気づいたら話始めていた。 藤咲との思い出をひとつひとつ鮮明に思い出しては苦しくなる。 キスに本気になって曖昧な関係ではあったが、両想いだと信じて疑わなかったあの頃。 藤咲の鋭い刃物のような言葉たち。 同級生からの冷たい視線。 誰が悪いとかじゃなくて、自分が浅はかだっただけの話。 彼の気持ちを表面上だけ見ては、ちゃんと確かめようとしなかった自分にも落ち度はあった。 「告白して両思いだと思ったら、俺だけ舞い上がって馬鹿みたいなんです。オマケに自分がそっちだってクラス中に広まって·····怖くて学校行けなくなってた弱いやつなんで·····」 律に励まされたとしてもやっぱり一歩踏み出せたところでもう一歩前には進めなかった。 また、もし自分の素行がバレたらと思うと、 前みたいに誰かと親交を深める勇気はなかった。 これが今の自分を構成する全て。 自分で吐いていて悲しくなる。 話し出すと感情と一緒に涙が出そうになり、 渉太はそんな醜い顔を隠したくてその場にしゃがみ込んだ。膝を抱えて顔を腕の中に埋める。 律仁さんに泣いてる姿ばかり見られたくない。必死で唇を強く噛んでは堪える。 渉太が突っ伏してから暫くして、隣の気配が近くなった。 律仁さんの香水なのか、爽やかで甘い匂いが 鼻腔を蕩かしては、一瞬首が重みで縮んだかと思えばふわっと頭に手を置かれていた。

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