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先輩を不自然に見過ぎてしまっていただろうか·····。熱っぽい視線で見たつもりはなかったのだが、自分の無意識な行動で相手を不愉快にはさせたくはなかった。
「そういえば、渉太、目が赤いけど律仁になんか言われたか?」
「えっ·····ああ、いや別に·····」
「だってお前らあそこら辺にいただろ?あいつまた、渉太に余計なこと言ったんじゃないのか?」
先程まで律仁さんと話していた、高台のから少し離れた下の鉄柵付近を指差されて、あそこにいた自分達を大樹先輩にずっと見られていたのだと思うと恥ずかしくて居た堪れない気持ちになった。
「い、言われてないです」
確かに律仁さんに過去を打ち明けた時、感情が溢れて泣きそうになりながら堪えていた。顔を埋めて誤魔化すために瞼を擦りすぎてしまったのだろうか。
どちらにせよ、泣きっ面を見せてしまったことに変わりわなくて羞恥心が増した。
「ならいいんだか·····まあーでも半ば強引だったし、車ん中でも居心地悪そうに顔顰めてたからさ、心配だったんだ」
やっぱり大樹先輩は本当にいい人だ。
人が具合悪かったり浮かない顔をしてたりすると直ぐに察してくれて、かといって踏み込みすぎない心地のいい距離感を保ってくれる。
「俺は、大丈夫です。それに久々に来れて楽しいので」
「そうか、ならいいんだが。あまり律仁に振り回され過ぎるなよ。ほんとアイツ良くも悪くも自由な奴だから」
そんな先輩が·····
そんな先輩の優しさが好きです。
こんな俺にも構ってくれる先輩が好きです。
心の中で何度も叫ぶ。
「さて、愛華でも探してくるかな。」と大樹先輩がその場から去ろうとした時、渉太は「あの、先輩」と呼び止めていた。
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