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「渉太は律に会えたときと俺に会えたときどっちが嬉しかった?」 渉太が返答に困らせていると律仁さんは 距離を詰めながらも意地悪そうにそう問うてきた。 どっちなんて比べるものじゃない。 勿論、憧れの律に会えたことは夢を見てるくらいに嬉しかった。 だけど、律仁さんは自分の中では特別な存在だから一番会って話したいと思っていた人だから嬉しいの振り幅が違うに決まっている。 ほのかな律仁さんから香るいつもの甘い匂とアルコールの匂いが混ざっては鼻をかすめる。律仁さんの頬はほんのり赤くなっていて、眼鏡の奥の目が据わっていた。 完全に酔っ払ってる。 自分を見据えたまま離さない瞳の圧に押し負かされそうになる。 「それはっ……律も嬉しかったですけど……さっきも言いましたけど……り、り、律仁さんに会えたことの方が俺の中で特別というか……」 「それは、嬉しいなー」 これ以上近づかれたら多分自分の心臓は早くなる鼓動に耐えきれなくて弾けて無くなってしまいそうなくらいだった。 「あ、律仁さん、酔っ払ってますか……?なら、早く寝た方がいいです……律仁さんも明日仕事ありますよね?……」 渉太は、流れを変えようとひたすら早口で律仁さんの気を反らせようとしてみるが、渉太の問いかけなど耳に入っていないのか視線が自分を捕らえて離れなかった。 「焦ってる渉太も可愛い」 動揺で上手く腰を下がることができず、手が掠ってしまい右肘だけ絨毯についてしまう。 肩を押されたら確実に倒れてしまう体勢……。 渉太は体勢を整えることができずにいると、律仁さんに上半身を覆い被さるように左手を床についてこられては見下ろされてしまった。 そのままキスでもされそうなその勢いに狼狽える。 確かに律仁さんと前に進みたいとは言ったし、前に進むということはそういうことも有りきだとは覚悟はしていたが、渉太は心の準備がまだ出来てなかった。

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