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渉太は自分が彼女らの足元にも及ばないと自覚はしているけど、無意識に今まで律と共演してきた女優さん達を思い浮かべては悲しくなっていた。
「そうだね、だけど好きになるのに綺麗だとか美人だとか俺には重要じゃないよ。人を好きになるのに明確な理由なんてないし。強いて言うなら俺にとっては渉太が人間的に魅力的だから好きになった。それだけじゃダメかな?」
渉太は顔を伏せては目頭が熱くなった。
右手から伝わる律仁さんの体温、低くて優しい声から出る気持ちが浮つくような言葉。
こんな俺でも好きな人にこんなに好きになってもらえているのは嬉しい……嬉しいけど、この手を自分は簡単に重ねていい立場じゃない。
渉太は左手を掌に跡がつくくらい強く握って溢れてくる感情を押し殺す。
首を上下に降って否定するのがやっとだった。
「渉太は俺の事どう思ってくれてるの?やっぱり芸能人だから嫌になった?」
嫌になってなんかない。
律仁さんは律仁さんだから、有名人だとしても好きと思った。
律の姿でいるよりもずっと……。
だけど律仁さんは律で、律は律仁さんの事実は変わらない。
自分の推しだから、推しに好かれているからって「嬉しい、付き合いましょう」なんてならない。そんなの世間が許さない。
ましてや相手が男なんて。
自分の恋が成就しないことよりも、自分のせいで律仁さんが律でいられなくなることの方が何倍も辛い。
「はい……アイドルだから…余計に俺は律仁さんの気持ちに答えるわけにいかないです。俺はっ…元々律仁さんとは付き合えないって言いました」
自分の気持ちに正直にいることは、大事だと、律仁に教わって背中を押されていたはずなのに、どんなに律仁さんからの熱い告白を受けたとしても根本的に変わるのは無理だ。
こーだからとかあーだからとか、理屈で物を考えて前に進めない。
結果諦めるんだ………。
感情的になって周りなんか気にせず、「俺も律仁さんが好きです」なんて言えたらどんなにいいだろう。
変わらない自分に気持ちが冷めていく。
「渉太、嘘つかないで?目を見て話して。渉太は前に俺と先に進みたいって言ってくれたよね?」
それと同時に、動揺が声音から出ている律仁さんの声を聴いて胸が痛くなった。
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