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謝らせるつもりで言ったわけじゃないのに、 辛辣な空気になってしまい、次に発する言葉が重たくなる。 「あの…場所変えませんか?俺、律仁さんに話したいことがあって……」 ここでもいいかと思ったが、流石に店主の前で律仁さんに告白するのも自分が恥ずかしいし、疎らにいるお客さんにも迷惑がかかりそうで渉太は勇気を出してそう提案する。 「いいよ?どこ行きたい?」 優しい声音で問いかけてくる律仁さんだっけど、肝心の表情は帽子でよく分からなかった。 「じゃあ、星が綺麗なところで……」 律仁さんにそう問われて、人気が少なく尚且つ静かで話しやすい場所と言って考えてみたが、流石に展望台までは遠い。ざっくりと出てきたのが、これだった。 「おっけー」 何処か思いあたるような節があるのか、考えるような間もなく速攻で帰ってきた二言。 善は急げと言うように律仁さんは伝票を取っては『おやじ、お勘定』と言って自分が払う隙を与えてくれなかった。 店の少し離れたところにある、料金駐車場までゆっくりと足を進めながら律仁に着いていくと、見覚えのある乗用車に辿り着いた。 助手席の扉を律仁さんに開けられては乗り込むと、まもなくして、律仁も車の前を回り込んでは運転席に乗ってきた。 何だか何時にもまして忙しなさを感じる。 乗り込むなり、電子タバコを手に取って咥えて一息ついては、漸く落ち着いたようだった。 料金所を出て走る車の中。 律仁さんと何を話せばいいのか、皆目検討もつかず、助手席から窓の外を眺めていると、丁度信号で停車した時に律の大きなビル看板を見つけた。 律がイメージモデルのアクセサリーブランドの看板。雨がモチーフなのか濡れた髪に少しはだけたワイシャツ。手を顔前にかざして、指に絡まるようにネックレスが下がっている。斜めの角度から艶めかしい視線を送る律。溜息が出るくらい格好良い……。 「お仕事、忙しそうですね、Christia(クリスティア)のポスターとかカッコよかったです……」 渉太はその看板を見て、思い出したように発進と同時で律の話を振る。 「まぁ…そう」 しかし思いの他、素っ気ない反応に律の話題は慎むべきだったかと後悔した。 律仁さんのひとつひとつの表情が気になって期待よりも不安が募る。

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