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あからさまに拒絶するのも変な気がして
渉太は周りを見渡して、車が通っていないのを確認すると、大きく喉を鳴らす。
別に嫌なわけじゃないし、出来ることなら自分だって律仁さんと……。
律仁さんにこんな事までされたら、近寄らない以外の選択肢がなかった。
完全に自分が恥じらうのを分かって言ってる。やっぱり意地悪い人だ。
渉太は少しづつ律仁さんの元へと近づいては帽子の範囲内に完全に隠れた。
律仁さんとの距離が近い……。
目をくの字に閉じては、律仁さんの気配を近くに感じていると程なくして唇が重なった。
さっきよりも長い。
キスってこんなに柔らかくてドキドキして優しいものだったんだと。
しばらく律仁さんとのキスの感触に浸っていると下唇を甘噛みされては、律仁さんの舌先で唇を舐められ、渉太の身体がビクリと跳ねる。
変に背中がゾクゾクしてこれ以上されると、心臓が持たなくなりそうになった。
渉太は慌てて、律仁さんの胸元を軽く押して顔を背けたが、腰をしっかり抱かれているので律仁さんとの距離は近いまま。
「律仁さんっ、俺、まだそれ以上は無理ですっ……」
恋愛や恋人同士の付き合い方に関して免疫がない自分には、軽く触れ合うキスくらいが精一杯。
「うーん、残念。あわよくばそのままお持ち帰りできるかと思ったんだけど。渉太にしては頑張った方かな?」
律仁さんは帽子を被り直しては、眉を下げると少し寂しそうに笑いながら腰から腕が離された。
「あわよくばって……」
相変わらず少し軽い所は変わらない。
だけど律仁さんが側にいるだけで、笑いかけてくれるだけでホッとする。
すると、律仁さんに強く抱き竦められては耳元で囁かれた。
「もしかしたら、これから沢山渉太には苦労掛けちゃうかもしれないけどいい?」
さっきの余裕綽々に笑っていたのと明らかに違う少し弱気な声音。
「…はい」
「もう無理とか言って離れていかない?」
渉太は律仁さんが親も居ても居ないようだと寂しそうに語っていたのを思いだす。適当で華やかそうに見えて本当は律仁さんは寂しがり屋なんじゃないかと感じたあの時。
だったら尚更……。
「……大丈夫です。律仁さんを選んだのは俺なので……」
自分に嘘をつかずこの人と月日を重ねられたなら……。
律仁さんが自分に自信を与えてくれたように、自分も律仁さんに与えられる人になれたら……。
憧れだけど、好きな人、誰に何を言われようとも絶対離したくない人、離しちゃいけない人。
律仁さんの手が自分の後頭部に回り、優しく撫でられる。
渉太は強く唇を噛み締めると律仁さんの優しい手に答えるようにギュッと背中に手を回して抱き締めた。
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