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触れたいのに
多分……いや、確実に自分の部屋の倍以上の広さがある間取り。
外からの景色は今、自分がいる階より低い隣のマンションやビルを充分に見下ろせる。
だけど、低いマンション達も地上から見たらそれなりに一般的なマンションよりは高さはあって、綺麗な造りなのは間違いなかった。
それを超える立派なマンションに住んでいる律仁さんはやっぱり芸能人なんだと思わざるおえない。
ビルや街灯、街の明かりがホテルから見る景色みたいで綺麗だし、高級マンションなんて誰もが一度でいいから住んでみたいと憧れる物件。
「しょーうたっ」
窓の外を眺めていると、背後から律仁さんの声がして肩に顎を乗せてくる。
不意のことに、渉太は喉から心臓が飛び出るくらい驚いていた。
かと思えば、腹部に律仁さんの腕が回ってきて眺めていた窓のカーテンを閉められてしまう。
慣れなければと思っていても律仁さんの大胆なスキンシップには未だに慣れない。
アルバイト終わり、何の警戒心もなく店の前で車を停めては待っててくれている律仁さん。花井さんも勿論気づいてはいたが、黙認してくれているようだった。
その証拠に、律ファンの高校生アルバイトだけではなく店の誰にも話していないのか、この事に関して周りから一切小突かれなかった。
俺が律ファンだと誰にも話を広めていなった時みたいに、二人だけの話に留めてくれている。
律仁さんはやっぱり、花井さんのそういう口の固いところも見抜いて、あんな堂々とバレるような真似をしてきたのだろうか……。
しかし、ここ最近は何度か律仁さんが迎えにくるところを目にしたからか、唯の友達ではないと察した花井さんは度々「彼とデート?」なんて茶化してくるようにはなったけど……。
いつもは迎えに来て自分の家まで送って別れる。やっぱり売れっ子だし、忙しいのに合間を縫ってきてくれるのは嬉しいような……申し訳ないような……そう謝っても「渉太にならどんなに会える時間が短くても会いに行きたいじゃん?」と照れてしまう言葉を意図も簡単に返されてしまった。
2ヶ月程に及ぶ映画の撮影もひと段落して、明日は律の仕事がオフらしく渉太もアルバイトが休みだったので、今日は初めて律仁さんの自宅に行くことになった。
外でご飯を済ませ、のこのこと何も考えずに律仁さんに誘われるままについて行ったものの、相手の家に、しかも泊まりで行くってことはそういう雰囲気にならない訳がない。
現に律仁さんは俺に触れたい……なんて言ってきていたし……。俺だって……。
渉太はその事に律仁さんに背後から抱き締められて漸く気がついた。
あのキス以来何度か触れるだけのキスならした。最初は緊張でキスの間、息すらできなかったのを律仁さんに笑われたりしたけど、
慣れとは怖いもので照れはするが、難なく
受け入れられるようにはなった。
流石に公の場では出来なくて送って貰った帰りの自分の自宅の玄関先でだけど……。
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