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頬に軽く唇を落とされ、振り返ると律仁さんに身体を向かい合うように促さられては唇が重なる。 ここまではいつもと変わらない。 唇に吸いつくような、甘噛みのキスは渉太の脳みそを溶けさせるくらいに濃厚だった。 頭がぼーっとして立っているのがやっとで、渉太は律仁さんが背中に回して支えている腕を必死に掴んで保っていた。 腕を強く掴んだことに気がついたのか、律仁さんが唇を離すと顔を覗き込んでくる。 「渉太、大丈夫?」 大丈夫ではないけど、律仁さんとのキスは止めたくなくて渉太はこくりと頷いた。 別れ際すぐ終わってしまうキスも、今日は気にしなくていい。 頷いても自分が立っているのがキツいと感じとったのか律仁さんが「一旦座ろうかっ。適当に座ってて」とリビングの中央にあるコーナーソファを差しては、カウンターのキッチンへと行ってしまった。 渉太は途中で止められてしまったことに少しガッカリしながらも、ソファの何処に座るべきなのか悩んでいた。 一人掛けとかニ人掛けのレベルじゃない広さのソファ。これを自宅に置いたら部屋をソファで埋め尽くされてしまうんじゃないかというくらい大きかった。 律仁さんの定位置はどこなんだろうか……。 悩んだ末にコーナーソファの一人掛けのソファに腰を落とした。 広い方より多少狭い方が落ち着く……。 部屋も統一感のあるブラウンと白や黒の家具で徹底されていて、まるでモデルルームのような部屋。 よくよく冷静になって考えたら、律の雑誌をズラズラと並べている自分の部屋とは違うこんな大人な部屋に落ち着いて居られる訳がなく、無駄に緊張して姿勢が良くなっていた。 しばらくして、律仁さんがマグカップを二つ、珈琲の香ばしい香りをさせながら持ってきては、リビングへと戻ってきた。 「渉太……そんなとこ居ないで、もっとこっちおいで」 律仁さんは大きいソファの中央に座るとローテーブルにコースターを置きその上にマグカップを乗せる。 「俺はっここで充分です……」 「さっきまであんなにピッタリくっついて キスしてたのに?」 俺の分であろうマグカップは当然、自分の目の前に置かれる訳もなく、律仁さんの直ぐ隣の場所に置かれてしまう。 「あれはっ律仁さんから仕掛けてきたからじゃないですかっ……」 「そのわりには渉太も満更でもなかった顔してたけど?」 律仁さんは珈琲に口をつけて、口角を上げてニヤつかせながら此方を見てくる。 渉太は途端に顔が熱くなり、俯いては膝の上で強く拳を握っていた。 図星なだけに何も言い返せずにいると「おいで?近づいてくれないと続きできないよ?」 と律仁さんに促されてしまい、渉太は大人しく隣に座ることにした。

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