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本当に数ヶ月前の自分じゃ考えられないくらい律仁さんとの甘い時間が流れていく。 しかもそれが、自分の推しているアイドルなんて……。 隣に座ったところで「じゃあ、さっきの続きを……」となる訳はなく、渉太は先程の熱と少し冷めた空気に戸惑ってはとりあえず、気を落ち着かせる為に律仁さんが淹れてくれた珈琲に口をつけた。 改めての律仁さんの隣はやっぱり緊張する。 「この部屋を見ると、本当に芸能人だなーって感じがします」 沈黙に耐えられずに、適当に辺りを見渡しては率直な感想を言う。 律は雑誌で曲作りはギターかエレクトーンを使うって言っていた通り、リビングにはちゃんとエレクトーンが置いてあるし、律の部屋だ。 「まぁ……ちなみにさっき窓から見えてたやつ、大樹の住んでるマンション」 律仁さんは背もたれまで深く座り、苦笑いしては、今はカーテンが締められて見えないが窓の外を指した。 「えっ……」 大樹先輩が律仁さんの近くに住んでいることも驚きだが、まさかあんな中層マンションに住んでるとは思わなかった……。 大樹先輩のことは詳しく知らないし、小さい頃芸能界入りするくらいだから、俺みたいな一般家庭ではない気はしていたけど……。 「大樹ん家音楽一家だから、そこそこ裕福なんだよね。だから一人暮らしであのマンションに住めるくらい意外とあいつの方が坊っちゃんだったりする」 思わぬ先輩の事実に渉太は言葉がでなくなる。律仁さんとユニットアイドルだったことといい、大樹先輩には驚かされてばかりだ。 今に始まったことではないが、そんな人に自分は恋焦がれてしまっては、告白までしたことに身の程を弁えろと言いたくなる。 「大樹。学業専念って表向きではなってるけど、親が音楽業界で名の知れた有名人だからその息子がアイドルってレッテル貼られるようになったのが嫌で辞めたんだよ。いちいち小突かれたり、集られるのが嫌で周りには隠してるみたいだけど」 いつも完璧で優しくて、天体好きで……音楽業界と繋がりがあるなんて全く思わなかった。そんな大樹先輩にも隠すくらいのコンプレックスがあるんだと思うと自分はこの話を律仁さんから聞いてしまって良かったのだろうかと、居た堪れない気持ちになる。 「……りっ」 そんな気持ちを抱いていると、その心を読んだかのように律仁さんの顔が近づいてきて、思わず身体を微かに引かせた。 「心配しなくても、大樹も渉太のことは信頼してるから変に身構えたりする必要はないよ。いつも通り接すればいいから……大樹は大樹なりに好きにやってるみたいだし」 「はい……」 先輩に信頼されているのは嬉しいけど、複雑な気持ちだった。この話を聞いた後で自分は先輩といつも通り接することができるか不安になったが、あの告白の時と同様に先輩は俺が事情を知ったと聞いてもなお、変わらないような気がした。 先輩の身分がどうであろうと、俺が実際に見てきて、関わってきた先輩は変わらない。

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