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自分の居間より広い、15畳くらいの部屋の
真ん中に存在感のあるダブルベット。
周りは片面の壁一面の本に、反対側にはクローゼット。本は全部仕事関係だろうか……。
寝室までもが、どこかのホテルみたいにお洒落で、そのベットの上で背中を凭れては、ベットサイドのランプの明かりで本を読んでいる律仁さんは凄く絵になった。
「渉太、どうした?」
顔を上げ優しく問いかけくるのは眼鏡を掛けたいつもの律仁さんだった。
勢いで律仁さんの事が気になるからと入ってきたものの、あんな後だし迷惑だっただろうか。
「あ、あの……えっと……さっきの……は…りっ、律仁さんのこと嫌いになった訳じゃないってこと伝えておきたくて……」
話すことを明確に用意していなかったからか、言葉に詰まっては上手く話せず、吃りがちになってしまった。律仁さんの次の行動に緊張が走る。すると、律仁さんは本をサイドテーブルに置くと静かに微笑んで見せた。
「大丈夫。渉太気にしすぎ。流石に蹴りはびっくりしたけどね」
「すいません……」
「俺の方が反省したくらいだし、蹴られたくらいで渉太を嫌いになったりしないから」
でも……だとか、やっぱり……だとか自分に非があることを考えていると、律仁さんが布団を捲っては「くる?」と左隣を促してきた。
「えっ?」
突然の誘いに戸惑っていると律仁さんは「嫌ならいいよ」と先程のこともあるからか、気遣ってきた。
嫌じゃない。
渉太はゆっくり律仁さんの元へと近づくと「お邪魔します……」と言って布団の中へと足を突っ込んでは、横になった。
掛け布団をかけられ、律仁さんは眼鏡を外すとベッドサイドの明かりが消される。
律仁さんと同じ布団に入っていると思うと胸の鼓動が早くなって余計に眠れなくなっていた。
すると、隣の律仁さんが近づいてくる気配を感じて顔を向けると頭を優しく抱くようにして竦められた。
気持ちではどうとでもなるけど、身体の恐怖心は拭えるものじゃないのか、律仁さんの腕の中に収まった瞬間、全身が緊張する。
それが伝わったのか律仁さんは「何もしないから」と言って俺を宥めてきた。
渉太は自分の体に「大丈夫」だと言い聞かせては胸に抱かれながらじっとしていた。
「やっぱり俺も、渉太にキスしたら触りたいとか渉太の色んな顔が見たいとか思っちゃうけど、渉太が嫌がってまでしたい訳じゃないから」
律仁さんの胸から耳へと響く、柔らかい声。
それが、心地よくて固まっていた身体が次第に解れていくのが判った。
「こうやって渉太との一緒の時間貰えてるだけで、充分だよ」
こんな臆病な俺のペースに合わせてくれて、じっと待ってくれていて、どこまで出来た人なんだろうか。
こんな人が恋人だったらと羨んで、律をランキングに入れる女性達の気持ちが少し分かる気がした。
「でも、スキンシップは許してね」
「はい……」
こんなに自分は大切にされているのだと感じるのだから、やっぱり俺はこの人をちゃんと受け入れられるようになりたい……。
気持ちに応えられるようになりたい。
律仁さんの規則的な心臓の鼓動と胸の温かさに、うとうとしては、静かに目を瞑った。
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