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最悪のトライアングル
隣はマネージャーさんだろうか。自分の母親くらいに年齢が高そうだが、スタイルも良くて才色兼備で仕事の出来そうな雰囲気を漂わせている。
藤咲はその女性に楽屋へ先に戻るように促すと、女性は俺たちに一礼をしては背を向けて行ってしまった。
女性を見届けた後、目線を藤咲に戻すと、
蔑むような笑みを浮かべて自分のことを見てきていて背筋が凍りつく。
丁度、演奏が終わって楽屋に戻ってきたのだろう。今一番会いたくなかった人に会ってしまった…。
「ファンも熱狂的になると怖いね。渉太、浅倉さんをストーカーしてお得意の色仕掛けでもしたの?」
一緒に笑い合って律の話をしていた頃じゃない、終業式前日のあの冷徹な藤咲のまま。
棘のある言葉のまま、律仁さんと繋がれた手を目にして言い放たれた。
心臓がギュッと締まり、動悸がして上手く問いに答えられない。やっぱり冷たい視線を向けられるのは怖い。
過去に藤咲は同性に恋愛感情を抱かれるのは気色の悪いと言っていた。
今でもそれが顕在であるならば、律仁さんと俺が手を繋いでいるなんて不愉快極まりないだろう。
渉太は慌てて、弁解しようと手を離そうとしたが律仁さんの手は離れてくれなかった。
それどころか、指を絡ませるように繋ぎ直しては藤咲に見せびらかすようにスっと顔の横まで持ち上げられる。
「尚弥くん、ご冗談を。逆ですよ、俺が彼に一目惚れして仕掛けたんです」
堂々と藤咲の前で交際宣言をする律仁さんに、渉太は冷や汗をかいていた。
絶対地雷になるのは判っているからだ。
しかし、怯えている自分に気づいているのかしっかりと握り締めてくれる律仁さんの手が少し頼もしかった。
「アイドルが笑っちゃう。そうだ、この後食事でもどうですか?今後の仕事の為に親交でも深めましょうよ。そちらの浅倉さんの恋人も一緒に。浅倉さん俺と渉太、高校の同級生だったんですよ」
藤咲は鼻で笑うと思いついたように提案してきた。
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