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「ホントに浅倉さんの一目惚れ?渉太が狙ったようにしか思えないんだけど」
確かに藤咲の言う通りだ。律と出会いたいから大学に入った訳では無いにしても、
たまたまとはいえ、律仁さんに出会って好きになって、律仁さんが律だと知ったとき、客観的に自分のことをそうだと思った。
律と繋がるように狙ったのと同じことだと。
「悪い?確かに渉太は律のファンだけど、出会ったときは俺だって気づいてなかったし、渉太は俺の事眼中には無かったよ」
藤咲の発言によって負の感情に引き寄せられていたところに、助言するかのよう律仁さんが割って入ってきた。
「でも、渉太は面食いだから律だって知った途端、手のひら返してきたんでしょう」
「それはどうかな?渉太がわざわざ狙って近づくような性格じゃないの、友達の君ならよく分かるんじゃないのかな?」
俺の事をよく見てくれていている律仁さんの言葉は素直に嬉しかった。
自分は自分なりに葛藤していた。律だからラッキーなんじゃなくて自分の憧れの律だからこその躊躇いがあったこと。
そして自分の気持ちを押し殺してまで得られる幸せはないこと。
律仁さんはそれを承知で俺と付き合ってくれている。結局助けられてばかりだ。
「アイドルが恋愛なんて、それにゲイなんて世間が知ったらファンは離れていくんじゃないんですか」
「そうだね。少なくともアイドルとして…とか嫌悪感を抱く子はいると思うよ。離れてく子も。勿論のファンの子をおざなりにしたい訳じゃないし大事だと思ってる。だけど、それ以前に俺は一人の人間であってアイドルじゃない俺としては渉太が一番大事だから一緒にいる。お互い好きだから付き合ってるだけ。君だってそうでしょう?」
藤咲の顔が歪む。あんなに謝らせるとか殴りたいだとか怒りを顕にしていたけど、いざ本人の前では言葉で相手を制圧していて大人だと思った。ホントに頭が下がるくらい、何も言い返せない自分とは遥かに違う。
「尚弥くんにはいないの?大事にしたいと思える人?」
「いる訳ないじゃないですか。気持ち悪い」
律仁さんが問いただしたとき、言葉に棘はあったもののそれまで怖かったはずの藤咲の逸らした目が少し寂しそうなのを感じた。
自分が告白したとき確か、藤咲は「嬉しい」と言っていた。ホントにあれは俺を嘲笑うための嘘だったんだろうか……。
俺が藤咲のことを好きだと分かっていて、気色悪いと思うなら、なんで早く切り捨ててくれなかったんだろうか。
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