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丸く収まったのかどうかは分からないけど、藤咲はそれ以上に渉太に突っかかってはこなかった。藤咲とのことは自分の問題なのに律仁さんに助けて貰ってしまって申し訳ないような……。 その後は気まずくも、重苦しい空気はどことなく流れていたが、律仁さんが中心になって会話を広げてくれたお陰で、事なき事を終え、藤咲からの威圧もなくなり渉太が必要以上に萎縮することはなくなった。 コース料理も最後のデザートまで食べ終えると藤咲はレストランを出るなり、マネージャーと思しき先程の女性が運転する車に乗り込こんだ。乗り込む前に律仁さんが社交辞令で挨拶をしていたが藤咲はお辞儀だけしては、すぐさま行ってしまう。 藤咲が居なくなった後、律仁さんに「送るよ」と言われて、自宅まで送って貰うことになった。 「渉太、ごめんね。辛い思いばっかりさせちゃって」 律仁さんは運転席に、渉太は助手席に乗り込むと、律仁さんに謝られ、狼狽えては手を振って否定する。 「いいえ。俺の方こそ……律仁さんに助けて貰ってしまって申し訳ないです」 「助けるも何も本当のことだし、好きな人が困ってたら助けたくなるものでしょ?」 「……はい」 ご最もな返しをされて渉太は静かに頷く。 自分ももし逆の立場だったら、律仁さんみたいに上手く立ち回りが出来ないかもしれないけど助けたいと思うのだろう。 それはお互い好き合って、大切に想い合ってるからこその行動。 「やっぱり律仁さんの言葉は俺だけじゃなくて色んな人の心を丸くしてくれるんだなーって思いました」 あんな尖っていた藤咲が威圧して来なくなったのは少なからず律仁さんと話してからだ。 「そう?渉太に俺は、そんな魔法使いみたいに思われてるの?」 「はい。俺にとっては律仁さんは魔法使いみたいなものなので……」 「んーそれ褒められてる?」 「褒めてます」 律仁さんは「そっかーそれなら嬉しいよ」と言いながら照れを隠すかのように車のエンジンが掛けられる。ハンドルを握り、前を見据え始めた横顔が微かに赤らんでいるのが何処から愛らしい。 渉太自身も自分で言ったそばから、何ともメルヘンチックな表現に恥ずかしくなった。

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