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流石に律仁さん相手に魔法使いだなんて美化し過ぎだっただろうか。だけど、それくらい勇気とか心にストンと落ちるような言葉をくれる人だから…。
しばらく羞恥で俯いていると運転席から「渉太…」と名前を呼ばれて顔をあげる。
「渉太と彼が過去に何があったか分からないし、渉太も辛いだろうから敢えて聞かないよ。でもどんな理由であれ、人を傷つけていい理由にはならないし渉太だから尚更許せない。だけど、彼は少し寂しい人なのかもしれないね。性根の腐ったどうしようも無い奴なら俺は忖度なしに手出してたと思うから」
「えっ……それは絶対にダメです」
怒った時の律仁さんの勢いから本当にやりかねないので渉太は真面目に注意すると、律仁さんは前方に視線を戻しては車を発進させた。駐車場を出て国道を走る。
「じょーだん。さっきは怒りに任せて言っちゃったけど手出すとか大樹以外には有り得ないから」
「えっ大樹先輩にはあるんですか……」
「さぁ?どうかな」
惚けた顔をして肩を揺らして笑いながら、自分の反応を楽しんでいるようだった。
車が発進して自宅に到着するまで、車の窓から外を眺めながら考えていた。
藤咲が寂しい人……律仁さんに問われて『気持ち悪い』と応えていた。その時の彼の寂しそうな目を思い出す。今まで自分が藤咲と過ごして来ていた中ではあんな表情は見たことはなかったかもしれない。
学生の頃は、彼から少なからず孤独は感じていた。だけど凛としていて自己をちゃんと持っている人ように見えていたから……。
藤咲は本当に誰がを好きになったり、大切に想う相手がいた事が無いんだろうか。
本当に冷徹な人間ならそんな顔なんてしないような気がした。
自宅へ送って貰う車の中で、渉太は、あの時の藤咲の気持ちと自分はちゃんと向き合いたいと思った。
高校生の時の自分は気持ちを隠したり、抑えたりするのに精一杯で藤咲の表の表情しか見えていなかったんじゃないんだろうか。
自分が藤咲と一緒に居れたらそれでいい、
藤咲の一番の友達は俺だと愉悦に浸るだけ、それ以外望まな過ぎて、必要以上に近づきもしなかった。
現に藤咲と言われていつも冷静で、繊細な指を踊らせてピアノを弾く藤咲と冷たい彼しか浮かばないのだから……。
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