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幾ら表面上では大丈夫そうに振舞っていても、やっぱりそんなことを調べてるなんて知ったら流石に引くに決まっている。 同性同士の付き合いに偏見がある人は少なからずはいるから……。 「だから、成功したのかなーって気になっちゃって。でもそんなことイチイチ話したくないよね」 渉太は恥ずかしさと、何処まで彼女に話すべきなのか考えては黙り込んでいると、花井さんは諦めたように「じゃあ、またバイトでね」と言って、その場を立ち去ろうとしていた。 「あの……花井さん、こういう話って嫌じゃないの?」 渉太は咄嗟に去りゆく背中に声を掛ける。 「全然。むしろ応援してるくらいだけど。渉太くんってさ、なんか庇いたくなっちゃうんだよね。ほら、小動物を愛でる感覚?」 花井さんは振り返ってくると、ケロッとした様子でそう応えた。 以前、大樹先輩にもそんなこと言われていたような気がする……。決してからかっている訳でも皮肉っているわけではないのだと判るにしても喜ぶべきなのか、複雑な気持ちだった。 「それに、ほら。渉太くん、彼氏の迎えがいる時と居ない時の『お疲れ様です』のトーンが明らかに違うし、嬉しそうに帰っていくからなんか、一生懸命に恋してて可愛いなーって、だからなんか頑張ってほしくて」 「……っ!?」 表では嬉しくてニヤけそうな顔も平常心を保って上手く取り繕っていたと思っていたが、花井さんにはお見通しのようだった。 女性の観察力は鋭いとはよく言うが、正しく頭が上がらない。 「男の子なのに可愛いとか嬉しくないよね。ごめんね」 渉太が何も返せずにいたせいか、花井さんは眉を下げて申し訳なさそうに謝ってきた。 別に不愉快に思ったわけじゃない、寧ろそんな風に思われていたのは嬉しいくらい。 誰かに応援してもらえるのは同性が好きな自分でも、恋をしていてもいいんだと思えるから。 「花井さん、ありがとう」 渉太は満面の笑顔で彼女にお礼を告げると、 彼女は目を見開き頬を染め、はにかんでは、「またね」と言い残して講義室を出ていった。

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