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「藤咲くんが発端で友達にゲイだってバレて皆の前で興味本意で悪戯されそうになったりとか……だから律仁さんと触れ合ったときその事を思い出してしまったんです」 直後はとりあえず伝える事に精一杯で上手く言葉にできなくて、正直に話す勇気もなくて、優しく気を逸らしてくれた律仁さんに甘えてしまっていた。 分かってくれていたとしてもちゃんと話さなきゃ行けないこと。 「嫌なこと思い出させてしまったみたいでごめんね」 「そんなことないです。俺も律仁さんとならって思ったのは本当だから……」 「その気持ちだけで充分だよ。前にも言ったように俺は渉太と一緒に過ごせる時間が大事だから。話してくれて、ありがとうね」 猫でも撫でるかのように頭の横を梳くように暖かく大きな手で一定間隔で撫でられる。 それが心地よくてそのまま瞼を閉じてしまいそうになった時、ふと頭を過ぎらせた不安に渉太は背筋をピンと伸ばした。 律仁さんはそんな渉太に驚いて手を離す。 「あ、律仁さん……だからって藤咲くんが悪いわけじゃないんでこないだ律仁さんと話してる藤咲くん見て思ったんです。彼も彼なりに事情あったのかな……ってだから殴るとかは……」 「大丈夫だよ。しないしない。尚弥くんとは打ち合わせで会ったけどそれなりに、仲良くやってるよ」 「でも律仁さん、怒ると物が飛んでくるって噂が……」 前例があるし、見かけによらず割と破天荒な過去をお持ちのような律仁さんだから渉太は怪訝な顔になった。 「物!?それ聞いたの大樹でしょ?!」 「あ、はい……」 「流石にないよ。まぁ、過去に1回だけあったけど……あいつにイラついて、近くにあったヘアーアイロン投げて壊してスタイリストさん怒らせた話」 「やっぱりあったんだ……」 冗談だと誤魔化しておきながら、大樹先輩に言質をとったらちゃんと話してくれた。 やっぱり律仁さんは都合の悪いことは曖昧にして優しさで紛らわせては、よく見せようとするところは狡いと思う。 危うく丸め込まれて騙されそうになっていた。 「大丈夫。アイロンはスイッチ入ってなかったし、顔には当ててないから、しかもあれは10年くらい前の話だから」 スイッチが入ってなかったから、人に向かって投げてもいい話にはならないのだが、慌てたように言い訳をし始める律仁さんが面白くて渉太は自然と笑みがこぼれていた。

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