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「それも聞いてます。今はそういう事はないって」 「大樹は渉太には甘いからよく余計なこと喋るなー」 「俺から聞いたんです。律仁さんだって先輩のことよく話してくるしお互い様じゃないですか」 律仁さんは何処か腑に落ちないのか、頬を膨らませて拗ねているようだった。 本当に律仁さんが表情をコロコロと変えるだけで渉太の気持ちパロメータが最高値に上がりそうなくらい尊いとはこういうことなんだろうか。 「でも。俺的には恋人の前では律のような紳士的な優男のイメージでいたかったんだけどなー」 渉太は心を取り乱しそうになるのをグッと堪えていつものように応答する。 「今更遅いです。律仁さんは俺の中では出会った時から紳士じゃないですから」 「確かに。初っ端から俺、渉太のこと泣かせてたしね。でも、好きな人からそれ言われるのはしんどいなー」 少しキツく言いすぎたかと思ったが、しんどいと言いながらも終始笑顔の律仁さんを見て安心した。 むしろこの状況を楽しんでいるように見えて、途端に、律仁さんは口元を右手で覆い、顔を赤くさせては「渉太にたまに棘のあること言われるのちょっと癖になってる俺、末期かも……」と呟きだす。 律仁さんのその言葉を聞いて、渉太も何だか羞恥を覚え、思わず俯いてしまった。 「ふ、藤咲くん…は、律仁さんと楽しく仕事できてますか?」 渉太はこの居た堪れなくなってしまった空気を打破するべく、今一番気にかかっていることを問いかけてみた。 「楽しんでくれてるかどうかは分からないけど、至って普通だよ。彼仕事に対して真剣に向き合ってくれて話進めやすいし」 「なら良かったです……」 自意識過剰かもしれないけど、律仁さんは人と好き嫌いで仕事をするような人じゃないと解っていても多少なりとも心配であった。

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